耳の聞こえない陸上選手のためのスタートランプをつくりたい――。
そんな目標に向け、東京都立のろう学校陸上部の顧問、竹見昌久さん(50)は動き出した。きっかけは、教え子が流した涙だった。
いまから15年ほど前。ろう者の大会で優勝経験もある女子生徒が、耳が聞こえる選手も出場する短距離走の試合にのぞんだ。
陸上競技のスタートの合図は、ピストルと審判の声だけだ。耳が聞こえない選手は周りを見て走り出すため、遅れてしまう。周囲の様子を確認しようとすれば、その時点でスタートの姿勢も崩れる。
この日、竹見さんからみても…