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新刊小説「藍を継ぐ海」を出した作家の伊与原新さん
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 第172回直木賞候補作に選ばれた短編集「藍を継ぐ海」(新潮社)に収録されている「星隕(お)つ駅逓(えきてい)」。北海道遠軽町の白滝地区で農場を営む江面(えづら)陽子さん(44)は、物語の描写と自身の生活を比べて「すべてがそっくりだ」と驚いたという。現実と虚構の一致はなぜ起きたのか。作者の伊与原新さんに聞いた。

 ――江面さんは「星隕つ駅逓」をどのようにして知ったのですか

 江面 先輩農家から「白滝が舞台の面白い小説があって、えづらファームがモデルではないか」と聞きました。読んでみて「え、これ本当にうちのことじゃないかな」って。

 周辺で民宿をやっている農場はうちしかない。お客さんに楽しんでもらうため、冬場も外に麦わらロールを置いているのもうちしかないので。

 ――消えていく地名をめぐる物語です

 江面 私たちが住む「白滝村」は、平成の大合併で「遠軽町」になってしまった。私も含めて白滝の人たちは、「白滝」の地名を残そうと頑張っているので、主人公の涼子にとにかく共感しました。

 でも、どこまでが事実で、どこまでがフィクションなのか。たくさんの謎も出てきました。

 ――江面さんの農場「えづらファーム」がモデルなのでしょうか

 伊与原 謎に思ってもらっていることが、実はそんなに謎ではないかもしれません。

 実際に遠軽へ行ったことはあ…

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