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会場で配布されたワークシート。結婚する・しない、婚活や妊活についても記入欄がある
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 奈良県が中高生を対象に、人生設計をデザインするセミナーを実施している。キーワードは、性と生殖の健康と権利を意味する「SRHR」。誰を好きになるか、子どもを産むか産まないか、自分で決める権利があることを伝えつつ、プランや目標を立てることの大切さを説いている。

 昨年12月下旬に開かれた「ライフデザインセミナー」。平群町の公共施設に中高生が集まり、県が制作したSRHRに関する短い動画を視聴した。「自分や相手の心も体も大事にできることが大切」として、性行為にはお互いの明確な合意を前提とする「性的合意」の重要性を説いた。「知識や頼れる人を増やし、相談できる場所や方法を調べておこう」とのメッセージが流れた。

 講師は産婦人科医で奈良大学副学長の島本太香子さん。若い頃は周囲にお見合いを勧められたといい、「他人が私の人生を語ることに違和感があった」と当時を振り返った。SRHRを「30年ほど前に認められた最近の権利」と紹介し、「皆さんには自分で決めていいんだよ、と伝えたい」と語った。

 島本さんは30代後半で出産した自身の経験を語りつつ、加齢は流産や早産、不妊症の増加につながることを説明し、「ライフプランを立てることが大切」と説いた。

 その後、参加者は人生計画の表を作成。進学や就職などは比較的スムーズに記入したが、結婚や育児については出席した5人全員が空欄のまま。「物価高で貯金できる気がしない」「まずは一人の時間を大切にしたい」といった声が上がった。

 司会兼ファシリテーターとして参加した、タレントで滋賀医科大生の粟岡里菜さん(25)は「生きていくためにまず仕事を、とは思うものの、結婚や出産は他者が関わる分、想像もつかないというのが若い子たちの本音では」と分析した。

 島本さんは「今の学生は不安が強く、子どもを持つことにポジティブになりづらい一方、50歳でもその気になれば出産できると思っている。『もっと早く知りたかった』と後悔する前に、行政が発信するのは意義があると思う」と話す。

 県こども・女性課によると、予算は国の少子化対策の交付金をあてている。南則行課長は「県として少子化対策は課題ではあるが、自己決定権の尊重は当然のこと。まずは必要な知識を伝えたいとの願いを込めている」と話す。

 県が専門家の監修のもとに作成した動画は、SRHRのほか、仕事とプライベートのバランス、妊娠・出産などをテーマに計9本あり、ユーチューブの県公式チャンネルで今月下旬以降に公開する。南課長は「動画だけでは不十分」として、学校や地域でセミナーを実施できるノウハウを伝えていきたいという。

 次回のセミナーは25日午後1時、桜井市役所大会議室で。講師は奈良女子大の星野聡子教授。QRコードから22日までに事前に申し込む。

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