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デモクラシーと戦争 インタビュー編⑦ 岡野八代さん

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戦争と女性

 「防衛費増額」や「憲法9条を変える」ことの賛否を問う世論調査をすると、男女の賛否には差がつく。戦争前夜の1930年代初めにも、しぶとく反戦を訴えた女性たちがいたが、最終的には多くが戦争協力へと向かった。女性と戦争の関係をどう考えるか、岡野八代・同志社大教授(西洋政治思想)に聞いた。

岡野八代さん

 おかの・やよ 1967年生まれ。著書に「戦争に抗する ケアの倫理と平和の構想」(2月に「ケアの倫理と平和の構想」のタイトルで文庫化)、「ケアの倫理 フェミニズムの政治思想」ほか。

 ――戦時中、女性はさまざまなかたちで戦時体制に協力することになりました。

 「手塩にかけて育てた子どもを兵士として送り出すこと、戦争のために産むことを求められました。男性が出征した後の町で、勤労動員されて働き、空襲の火を消すことも、女性の役目とされました。戦争国家は、男性とはまた違うかたちで、女性たちをとことん利用したのです」

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溶接作業に取り組む女子挺身(ていしん)隊員たち=1944年10月
  • 市川房枝が迫られた「三択」 ひたむきな活動は戦争協力に変質した
  • 「誰かのために」利用され、切り捨てられた 戦争がさらす国家の素顔

 ――戦争に反対した女性団体もありましたが、日中戦争が始まる頃には多くが、消滅や、解散や戦争協力に向かいました。

 「反対の声は封殺されてしまいました。社会的立場が弱い人は、発言権や政治的権力も弱いため、権力者たちが決めた価値観や社会の常識や権力関係を、より重く背負うことになりがちです。一度戦争が始まってしまえば、誰にとっても、抵抗には命や社会的生命を失う覚悟が必要ですが、発言権の弱い女性の場合はなおさらです」

カントが語ったこと

 ――戦争が始まる前に何ができるかですね。

 「私は9.11同時多発テロ…

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