予約だけでほぼ完売してしまう酒が群馬にある。サイズは一升瓶のみ。新聞をくるっと巻いてラベルを貼り付けた武骨ないでたちながら、味はフルーティーでほのかなガス感。今年ももうすぐ、年に一度の販売が始まる。
その名も「新聞紙のお酒」。というのはリピーターたちが勝手に名付けた通称で、本名は「鳳凰(ほうおう)聖徳 純米吟醸 無濾過(ろか)生原酒」(税込み3400円)。群馬県甘楽町の聖徳銘醸が造る限定酒だ。
「もともと商品化する予定はなかったんです」と工場長の滝沢幹夫さん(63)。同社の「鳳凰聖徳 純米吟醸」の原酒として造っていたが、ある時、蔵人がフレッシュでジューシーな香りが立ち上る搾りたての酒を前に、「飲んでみたい」とポツリ。さすがにそのまま飲むわけにはいかないので、当時の工場長だった西岡義彦さん(66)が蔵人に指示し、工場にあった33本の一升瓶に詰め、新聞紙でくるみ、事務所のパソコンで作った簡単なラベルを貼り付けたのが始まりだった。2011年のことだ。
社員らだけでは飲みきれない…