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目を閉じて「触地図」を学ぶ成田国際高の生徒たち=2025年1月8日、千葉県成田市加良部3丁目、小林誠一撮影
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 視覚障害者が活用して空間を認識する「触地図」を学ぶ授業が長年、県立成田国際高校(千葉県成田市加良部3丁目)で続けられている。千葉地理学会の会長も務める石毛一郎教諭(60)が企画。視覚障害者への理解を深め、多様性の大切さを学んで欲しいという狙いがあるという。

 触地図は、道路や建物などを凹凸のある線や網目模様で、注記を点字で表記している。

 今月8日、地理総合の単元「地図の種類」の一環として授業があった。地理を履修する3年生約30人の大半が利用は初めてだ。

 「全員、目をつぶって」。机を寄せ、2人1組になった生徒たちに石毛教諭が呼びかける。次に、透明な板を配り「触ってみましょう」。

 恐る恐る手を伸ばした生徒たちの大半は「分からない」と声を上げた。事前に概要説明を受けていたが、日ごろ利用していないだけに苦戦しながら地図を読み解いていた。

 石毛教諭は、生徒たちの多くが通学に利用する成田駅のほか、成田空港や東京ディズニーランドなど大規模施設には触地図が増えてきたと紹介。「(視覚障害者に)行く前に触ってもらって、楽しんでもらうといいよね」と語りかけた。

 石毛教諭が授業で触地図を採り入れたのは、約20年前。小中学校での出前授業も行ってきた。

 だが、普及が進んだとはいいがたい。現在、検定教科書の「地図の種類」に触地図の記載があるのは「少数派」だという。

 授業で石毛教諭は「用途によって様々な地図がある。触地図も知っておいてください」と締めくくった。

 授業を受けた土屋麻帆さん(18)は「点字は知っていたが、触地図は今まで意識したことがなかった。視覚障害者にとって空間を認識することは大変なこと。関心を高めていきたい」と話した。

 同校の多くの3年生にとって、現在は大学受験の時期だ。入試には出題されそうにないが、石毛教諭は「(授業の狙いに)周囲の理解があったからです」と謙虚に笑った。

 福水勝利校長は、生徒たちの多くが生物の授業でブラインドサッカーを体験したことを挙げ、「これこそ、文部科学省の言う『教科横断型』。学びが深まることを期待している」と話した。

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