通院や通勤などの目的に限って車の保有を認めた生活保護の利用者に対し、三重県鈴鹿市が運転の記録提出を求めていた独自の取り組みについて、原則廃止したことが24日、分かった。
記録提出をめぐり、同市の親子が2022年、提出しなかったために生活保護を停止されたのは違法だとして市を提訴。一審・津地裁は24年3月、「提出は過剰の疑いがある」などとして親子の訴えを認めて停止処分を取り消した。また日常生活などの必要な範囲での車利用を「自立した生活を送ることに資する」と評価。この判決を受け、厚生労働省は同年12月、車を利用できるケースを日常生活に必要な買い物などにも広げる通知を全国の自治体に出した。
通知を受け、末松則子市長は同月、「大きな方向性を国が示してくれた」として、車の保有を認めた場合に求めてきた記録提出について必要かどうか検討する方針を定例記者会見で明らかにした。市内部で検討し、「日常生活でも車を使うことができるならば確認する必要性が薄れた」として今後は記録提出を求めないことを決めたという。
一方、一審判決を受けて市側は控訴。名古屋高裁は一審を支持し、市側の控訴を棄却した。市はこれを不服として上告受理の申し立てをしている。市は「厚労省の通知前の事案」だとして申し立ては取り下げない方針。