2022年7月8日。テレビで速報が流れた。「安倍元首相 銃撃」
食い入るように画面を見つめた。自分ならどうするだろうか――。
警備犬と組み、テロを未然に防ぐ仕事をする北海道警の野口大輔巡査部長(30)。当時は担当を離れていたが、事件があると、頭でシミュレーションする癖がついていた。
安倍晋三元首相の事件で、凶器はカバンに入っていた。カバンが高い位置にある時、犬は前脚をかけ、背伸びをしないとにおいを嗅ぐことができない。どう嗅がせたらいいか。頭を悩ませた。
野口が警備犬担当になったのは18年4月。東京五輪開催を前に新設された機動隊の警察犬小隊3人の1人に選ばれた。無類の犬好きが買われた。
今でも忘れられない出来事がある。19年5月29日午前11時20分ごろ、札幌市の西区役所の電話が鳴った。
「爆破するぞ」
野口はバディーを組んでいた…