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島原鉄道の大三東駅に停車中のマモル号=2025年1月21日、長崎県島原市、松下英爾撮影

 雲仙・普賢岳の噴火活動でできた平成新山が車窓から見える島原鉄道(長崎県)で、「マモル号」という変わったヘッドマークの車両が快走している。愛嬌(あいきょう)のある似顔絵で描かれているのは、地域紙「島原新聞」で噴火災害の惨状を伝え、復興への提言を続けた同新聞社の前社長、清水真守(まもる)さん。2月3日で没後7年になる。

 同紙は1899(明治32)年に「開国新聞」として創刊され、島原半島3市を中心に発行する日刊紙。1990年に始まった普賢岳の噴火活動で、記者だった真守さんは被災者の声を伝え、火砕流や土石流の被害からの復興を訴えた。

 被災者救済などを求める陳情団にも加わり、宮沢喜一首相(当時)との面会などを連日、詳報。復興のための基金が増額され、阪神・淡路大震災後に被災者生活再建支援法が制定されるきっかけの一つにもなった。

 全国から詰めかけた報道陣とも交流。地域に精通した「まもっちゃん」は人望も厚かった。

 その後、社長に就任。ケーブルテレビやコミュニティーFMの経営にも携わったが、2018年に62歳で急逝した。

 「マモル号」の誕生は、亡くなった4カ月後。災害復興と半島振興に心血を注いだ真守さんの気概を形に表そうと、同紙などの社員が発案した。スポンサー企業などのヘッドマークをつけた車両が走る島原鉄道に打診し、実現した。

 真守さんの妻で社長を継いだ聖子(きよこ)さん(60)は、「マモル号」として島原の地を走る亡夫の胸中に思いをめぐらせる。「郷土について書き残す弊紙がこの地の『文化』ならば、島原鉄道も住民らの大切な人生を運ぶ『文化』。鉄路もペンも、いつまでも走らせたいと願っているはず」

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