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2024年12月14日午前5時ごろ、海上自衛隊が対馬(長崎県)の南西約100キロの海域で確認したロシア海軍のキロ改級潜水艦=防衛省統合幕僚監部ホームページから

 英紙フィナンシャル・タイムズは昨年末、ロシア軍が日韓両国の防衛施設や民間インフラなど計160カ所の攻撃対象リストを作っていたと報じました。防衛研究所の兵頭慎治研究幹事は「過剰反応する必要はない」と語る一方、「ウクライナでの戦争が長期化すれば、日本周辺の安全保障環境も悪化するという認識を持つべきだ」と指摘します。

  • ロシアが日韓の攻撃対象リスト作成 原発や奥尻の基地など160カ所

 ――今回の報道内容をどう評価しますか。

 ロシアはあらゆる軍事シナリオを作っており、驚くべきことではありません。米国や中国に対しても、ロシアは有事を想定したシミュレーションを行っています。

 報道では、ロシアがウクライナ南部クリミア半島を強制併合した2014年よりも前に作られた文書とされています。その後のロシアと西側との関係悪化が反映されているわけではありません。

 そもそも、ロシアはこうした軍事計画を政治的状況に応じて作成しているわけではない。文書があるからといって、ロシアが日韓への攻撃を政治的に意図しているかどうかは別の問題です。過剰反応する必要はないと思います。

 ただ、この文書は、ロシアと北大西洋条約機構(NATO)との戦争が発生した場合、東アジア地域に飛び火する事態を想定しています。NATOと戦争状態に陥ったとき、手薄になったロシア極東地域を米軍が攻撃してくるのではないかという前提です。ロシアのウクライナ侵略が先鋭化して、NATOと戦争状態に陥ると、東アジアも無関係ではなくなることを意味しているのです。

【連載】読み解く 世界の安保危機

ウクライナにとどまらず、パレスチナ情勢や台湾、北朝鮮、サイバー空間、地球規模の気候変動と世界各地で安全保障が揺れています。現場で何が起き、私たちの生活にどう影響するのか。のべ300人以上の国内外の識者へのインタビューを連載でお届けします。

 ――奥尻島レーダーサイトな…

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