「損切り物件なんです。良い買い物をしましたね」
2011年5月、池崎健一郎さん(45)は、東京都江東区有明1丁目の中古タワーマンションの一室を買った時、売り主からこう言われた。
東日本大震災から2カ月後だった。マンションは当時築3年。東京スカイツリーを望む高層階だったが新築時から3割近く値下がりしていた。投資用で持っていた売り主からすると、文字通りの損切りだった。
当時川崎市に住み、都内に座って通勤したいと、有明地区で住まいを探していた。ためらいはなかったが「安いマンション」との評価に悔しさもあったという。
マンションの総戸数は1085戸。3千人近くが暮らし、最上階の33階にはジムやプール、露天風呂やサウナ、バーなどの共用施設を備えていた。
ところが、住み始めて半年ほどした同年10月、自分の誕生日にバーを訪れると、90席近いスペースにいるのは、バーテンダーと2人だけ。
「立派なモノだけではすぐに飽きてしまう。じゃあ、僕がコトを起こそう」
12年に立候補して管理組合…