生物多様性への企業の関心が高まっている。生き物の絶滅や減少が世界中で加速するなか、企業活動の基盤となる自然を守り回復させることが、持続的な経営に欠かせないという認識が広がりつつあるからだ。金融界の要請を背景に、企業活動が自然に及ぼす影響や、得られる機会などの情報開示も広がっている。
世界中で生き物が加速度的に減り、絶滅の危機に直面している種も増えている。
「農林業、経済システムなど生物多様性に関するあらゆる分野は変わる必要があるが、何をすべきか知っているにもかかわらず、あまりに実行が遅い」。130カ国以上が加盟する生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)のアン・ラリゴーデリ事務局長は2024年10月、東京都内での地球環境国際賞・ブループラネット賞の受賞会見で、危機感を口にした。
評価した地球上の動物、植物の約25%、推計100万種が人間の活動の影響で絶滅の危機にあり、その速度は過去1千万年の数十~数百倍で、加速している。IPBESが19年に公表した報告書はこう指摘する。
身近な食材も危機にある。北海道大の仲岡雅裕教授らの研究グループは、北日本沿岸に生息する主要なコンブ11種の分布域は、温暖化が著しく進んだ(世界の平均気温が産業革命前より4度上昇)場合、2090年には1980年の0~25%と、消失の恐れがあると推計する。
こうしたなか、2030年ま…