【ニュートンから】 最新・古代エジプト研究(1)
古代エジプトの考古学研究は,最新のテクノロジーによって変革期をむかえている。宇宙から降りそそぐ素粒子の観測によって大ピラミッドの中に謎の大空間がみつかり,ドローンによる3次元(3D)計測によってピラミッドの建造方法を解きあかすかなめとなる石の積み方の詳細がみえはじめた。衛星が撮影した画像から新たな遺跡をみつける宇宙考古学も注目されている。今から約4500年前の古王国時代の大ピラミッド建造を中心に,新たなテクノロジーを駆使して謎を解く考古学者たちの挑戦を紹介しよう。
素粒子やドローン,衛星,AI。これらはすべて,「あるもの」の研究に使われている。「あるもの」とはなんだろうか。答えは,古代エジプトの遺跡ピラミッドだ。古代エジプト研究にとって,最新技術は今,欠かせないものになりつつある─。
日本の縄文時代に 高さ147メートルの建造物を実現
古代エジプトの歴史は今から約5000年前,紀元前3000年ごろにはじまった。国土はアフリカ大陸の北東端に位置し,南北をナイル川が縦断する。北東をアジア,西をリビア,南をスーダン,さらに地中海と紅海に面し,海とナイル川を通って多くの人や商品が行き交っていた。国土の9割は砂漠だったが,ナイル川の氾濫によって肥沃な土が流域に堆積して豊かな土壌をつくり,農耕が発展した。これらを経済基盤に,女王クレオパトラ(紀元前69~紀元前30)の死(紀元前30年)によって歴史に幕が閉じるまで,古代エジプトは長きにわたって大国として繁栄した。
ナイル川中流の西岸に位置するギザにある「三大ピラミッド」は,紀元前2500年ごろに王の墓として建造された。三大ピラミッドの中で最大なものは,古王国時代(紀元前2686ごろ~紀元前2181ごろ)の第4王朝のクフ王(在位:紀元前2589ごろ~紀元前2566ごろ)が建造した高さ約147メートルの「大ピラミッド」だ。
三大ピラミッドのほかの二つは,クフ王の息子のカフラー王(在位:紀元前2558ごろ~紀元前2532ごろ)が建造した高さ約144メートルのピラミッドと,孫のメンカウラー王(在位:紀元前2532ごろ~紀元前2503ごろ)が建造した高さ約65メートルのピラミッドである。三大ピラミッドが建てられていたころ,日本では縄文時代だった。縄文時代と同じ時代に,古代エジプト人たちは現代の40階建ての高層ビルに相当する巨大な建造物をつくりあげたのだ。
“永遠”をかなえる 強固な構造
完成時の三大ピラミッドは外側を石灰岩でできた白い化粧板でおおわれ,四角錐の側面は平らに仕上げられていた。化粧板のほとんどはあとの時代にカイロの町を建てるために建材として使われた。現在はカフラー王のピラミッドの上部をのぞいて,化粧板はあまり残っていない。だが,このような意図的な破壊や盗掘をのぞけば,約4500年前の建造物が良好な状態で残っているのはおどろくべきことだ。ピラミッドは永遠にこわれることがないようにつくられたといわれるが,現在のところまさにそのとおりとなっている。
ではなぜ,ピラミッドはこの…