雪深い2月は高校野球もオフシーズン。球児や指導者たちは、甲子園で采配を振るった名将や名勝負を見届けてきた審判の話に耳を傾けながら、球春の訪れを待っている。
「エンジョイ・ベースボール」を掲げて、一昨年夏の第105回全国高校野球選手権記念大会で優勝を果たした慶応の森林貴彦監督が11日、山形市の遊学館で「エンジョイ・ベースボールを通じたチームづくり、人づくり」と題して講演した。NTT東日本山形支店の主催で、高校野球などのスポーツ指導者ら約80人が参加した。
森林監督はエンジョイ・ベースボールについて「その場でニコニコやることが楽しいのではなく、『より高いレベルの野球を愉(たの)しもう』ということ」と説明。選手に自ら考える機会を与え、ミスも許容しながら成長を促す慶応の指導法を選手権大会優勝チームのエピソードを交えながら紹介した。
これまでの高校野球については、「勝ち」を追い求める余り、勝利至上主義が一部でゆがみをもたらしたと指摘。これからは「価値」も追求していく必要があると訴えた。
勝者と敗者で明暗が分かれる経験は「教室の授業では得られない」とし、自分で考え抜く習慣や負けても立ち直る力など、部活動を通じて得られる経験は人生100年時代を豊かにする、と強調した。
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山形県高校野球連盟の加盟各校の主将を対象にした研修会が9日、山形市の山形工業高で開かれ、日本高野連の尾崎泰輔・審判規則委員長が「スポーツマンシップを考える~高校野球から何を学ぶか」と題して講演した。
尾崎さんはアマチュア審判として30年以上の経験があり、仙台育英が東北勢として初優勝した第104回全国高校野球選手権大会では球審を務めた。
尾崎さんはスポーツで尊重すべきものはルール、相手、審判の三つだと説明。ルールを守ることは勝利を難しくさせるが、守り通すことに意義があると述べた。
その上で、尾崎さんは「野球から何を学んだのかを言語化してほしい」と求めた。「野球は失敗のスポーツと言われ、打率3割のバッターでも10回に7回は失敗する。チームスポーツでもある。三つ目のキーワードを自分自身で見つけて」と呼びかけた。
主将の経験を通じて得られるマネジメント能力、ホスピタリティー、クリエーティビティーは、時代の変革期にそのまま生きると強調。「過去は変えられないが、その意味を変えることはできる。失敗を恐れず挑戦して」とエールを送った。
日大山形の岩下瑛斗主将は「チームメートの前でうまくしゃべれない感じがして遠慮がちだったが、チームが苦しい時こそ自分から盛り上げられるよう、どんどん言葉を発していきたい」と話した。
この日は、夏の選手権大会などで球場アナウンスを担う各校のマネジャーを対象とした講習会も開かれ、山形テレビの菅原智郁アナウンサーが指導した。