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今津景展の展示
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 東京オペラシティアートギャラリー(東京・初台)で3月23日まで開催中の、今津景(1980年生まれ)による近作・新作約70点の初の大規模個展「今津景 タナ・アイル」に多くの人が訪れている。会場での文字情報は、あいさつ文と配布資料にある5点ほどの作品解説ぐらいだから、作品の魅力が言葉を介さずに伝わっているのだろう。

 その文章から分かるのは、今津がネットなどで採取した多数の画像をコンピューターで加工したものを下図に油彩で描くという技法と、2017年からインドネシアを拠点に、旧日本軍のことを含む歴史や神話、環境汚染といった同地に関わる画像が使われていることぐらいか。

 その結果生まれた画面は、発色がよくみずみずしい。写実的に描かれた、頭蓋骨(ずがいこつ)に背骨、駆ける虎や南洋の植物、旧日本兵らしき姿、人の腕、臓器などが重力から解放され、奥から手前に「層」をなすように中空に漂うかのようだ。ゼリーの中に浮かび、光をはらんでいるとも見える。表現方法としてはコラージュであり、へらで伸ばしたような跡や、ダリの絵画との近縁性も含め、デジタル時代のシュルレアリスムと呼びうる存在だ。

 絵画では通常、画面に反射し…

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