「琵琶湖の湖底水温 30年で1.5度上昇」
こんな見出しの記事が朝日新聞(大阪本社版)に載ったのは、今から27年前、1998年のことだ。
冬季に湖面付近で冷えた水が沈んで湖底に酸素をもたらす「琵琶湖の深呼吸」が、温暖化で不十分になる可能性を指摘していた。
深呼吸は専門的には全層循環といい、1月から3月ごろに起こる。朝日新聞データベースの収録記事で、深呼吸の言葉を使って温暖化との関係に触れたのはこれが最初だった。前年に温暖化防止京都会議(COP3)が開かれ、気候変動への関心が高まりをみせていたころだ。
その後、深呼吸の動向はたびたび報じられるようになった。酸欠状態が続けば湖底の生き物が死んでしまう。泥の中に閉じ込められていたリンや有害物質も溶け出し、負の連鎖を招きかねない。そんなシナリオが懸念されるからだ。
懸念は、記事から20年を経て現実になった。
2019年と20年は、2年連続で深呼吸が確認されなかった。湖底にすむハゼ科の魚イサザの死骸も見つかった。翌年からは復活したものの、時期が遅れる年があるなど予断を許さない状況は続き、滋賀県では毎年冬の関心事になっている。今年は19日、県が全層循環の確認を発表した。
かつて琵琶湖の環境といえば、排水に含まれる窒素やリンによる富栄養化が大きな課題だった。77年に初めて赤潮が発生。リンを含まない粉せっけんを使う県民運動が広がり、全国初の富栄養化防止条例が制定された。
83年からはアオコの発生も続いた。その後、水質の指標は改善に向かった一方で、80年代後半ごろから水温の上昇が目立つようになった。かつての湖底は5~8度ほどだったのが、近年は9度を超えるときもある。
富栄養化の時代から、気候変動の時代へ――。記事が出た90年代は、琵琶湖の環境の転換期とみることができる。
半世紀以上前からの調査で浮かんだ変化
この変化が生き物の構成にも影響したのではないか。そんな観点で湖底を調べた論文(https://doi.org/10.1080/20442041.2024.2388338)が昨年、専門誌に掲載された。
その結果は、やや意外なものだった。
京都大生態学研究センターの…