宿泊税を導入する自治体が増えている。観光振興の財源にするためだが、徴収の矢面に立つホテルや旅館にとっては「値上げ」を強いられるのと同じで、利用客にとっては負担増。何に使うか、が問われている。
キャンプ盛況、でも増やせない観光予算
福岡ソフトバンクホークス、読売ジャイアンツ、鹿島アントラーズ、横浜F・マリノス……。毎年1~2月、春季キャンプのため、プロ野球やJリーグのチームが宮崎市内に集結する。
真冬の時期、観光地は閑散期になりがちだが、多くのファンが訪れ、宮崎の宿泊施設は一番のかき入れ時になる。
この「スポーツランド」戦略を含めた観光振興をさらに推進したいが、人口減少などで充てられる市の予算は縮小し、見通しは厳しい。
そこで、新たな安定財源として浮上したのが宿泊税だ。
「使い道のチェック機能」盛り込む
導入に向け、市は観光関係の有識者による検討委員会を開く一方で、実際に税を徴収する宿泊事業者との意見交換の場を設けた。導入に反対する声もあったが、宿泊税は観光振興関連に活用し、使い道のチェック機能を設けることなどを報告書案に盛り込むことで、理解を得たという。
検討委は昨年12月、「導入は妥当」とする報告書を市長に提出。2023年の市内の宿泊者(民泊を除く)は221万6千人だったため、報告書が1泊200円が妥当とする税額で宿泊税を導入すれば約4億円の税収になる見通しだ。
導入時期や税収の用途は未定。委員の一人で、市ホテル旅館生活衛生同業組合の冨森信作組合長(青島グランドホテル社長)は「宿泊税の導入で、情報発信や交通アクセスなど課題の改善を図ってほしい」と話す。
「世界自然遺産の保全と活用」目的
宿泊税は法定外目的税で、地方税法に基づき特定の費用に充てるため自治体独自で条例を定めることができる。京都市が200~1千円だった税額を最大1万円に引き上げる方針を明らかにし、注目が集まっている。
鹿児島県奄美市は「世界自然遺産の保全と活用」を目的に27年4月からの導入を目指している。奄美大島への来島者は21年7月に世界自然遺産に登録された後、増加傾向で環境保全や施設管理などの経費もさらに増えると見込む。
市は財源確保に向けた検討委員会を23年8月に設置。宿泊税のほか「入島税」や「協力金」も候補に検討を重ね、検討委は1泊200円の宿泊税を課す案をまとめた。
一方、導入への機運が上がらない自治体もある。
■「観光の将来像、十分に示せ…