プロボクシングのバンタム級ダブル世界戦が24日、東京・有明アリーナであり、世界ボクシング評議会(WBC)王者の中谷潤人(27)=M・T=は、同6位のダビド・クエジャル=メキシコ=に3回KO勝ちし、3度目の防衛に成功した。
- 常に意識する井上尚弥、コンプレックスもあった……中谷潤人に聞く
世界ボクシング協会(WBA)王者の堤聖也(29)=角海老宝石=は、同4位の比嘉大吾(29)=志成=にジャッジ3者ともイーブン(114―114)の引き分けで、初防衛に成功した。比嘉は6年10カ月ぶりの世界王座返り咲きを惜しくも逃した。
これで30戦全勝、バンタム級で4連続KO勝ち
高まる周囲の期待を悠々と超えていく。中谷は、28戦全勝(18KO)を誇るメキシコの新鋭を瞬く間に退けた。
3回、残り30秒。近距離から挑戦者の腹を力強くたたく。相手がひるむと、たたみかけた。左右の強打を上に下にと浴びせ、2度のダウンを続けて奪い、試合を終わらせた。
主要4団体の王座を日本勢が占めるバンタム級で、頭一つ抜けた実力とされる27歳。1階級上の4団体統一王者・井上尚弥(大橋)との対戦も期待されるだけに、勝利はもちろん、内容にも注目が集まっていた。
だが、中谷はそんな視線をものともしない。試合前に、こう宣言していた。「圧倒する。KOシーンをお見せできればと思います」
身長173センチでこの階級では長身だが、今回の相手は自身より1センチ高かった。試合前に行う恒例の米国合宿では、4階級上のライト級の選手を中心に、約140回の実戦練習を積み上げた。
これで30戦全勝(23KO)。バンタム級では4試合連続のKO勝利となった。かねて「統一戦をしたい」と語ってきたが、それも実現が近づいている。
試合後、国際ボクシング連盟(IBF)同級王者の西田凌佑(りょうすけ)(六島)がリングに上がり、言い合った。「やりましょう」「ぜひお願いします」。
統一戦をクリアすれば、1階級上げて「モンスター」井上との対戦へ。描く未来はしっかりと定まっている。
「親友対決」で、堤は猛追ドロー
どれだけ打たれても、堤は前に出続けた。
9回、比嘉の鋭い左フックをあご付近に被弾し、ダウンを奪われた。だが、猛攻を仕掛けてくる相手にひるむことはなかった。直後に右の強打を浴びせて、ダウンを奪い返す。10回以降は手数を緩めず、相手を圧倒。猛追する形でドローに持ち込んだ。
相手の比嘉はライバルであり、高校時代からの友人でもある。互いの手を知り尽くした仲だからこそ、「ベルトを守ろうとか、迎え撃とうとか、そういう感覚で臨んだら間違いなくやられる」。パンチ力のある米国選手を招いて、100回超のスパーリングに励むなど万全の対策で、覚悟を持って臨んだ。
2020年10月、プロで一度戦った際は引き分けだった。今回、約4年ぶりの再戦でも、また決着はつかなかった。堤は試合後、比嘉と抱き合い、「強かったよ。ありがとう」と感謝を伝えた。
井上拓真(大橋)を破り、王者になって約4カ月。堤はこの試合を「王者として、価値を上げていく試合」と位置づけていた。引き分けでベルトを守ったものの、結果には「自分の心の弱さが出た試合だった。情けない」と悔しさを口にした。
以前からベルトを増やすことを目標にしていたが、「勝っていないので大きなことは言えない。統一戦と口に出しても文句を言われないくらい強くなりたい」。
この思いをまた力に変えるつもりだ。