Smiley face
写真・図版
徳永有輝さんが研究に取り組む最新の飼育施設。母豚は拘束されることなく、分娩・授乳期を過ごすことができる=2024年10月、熊本県益城町

現場へ! 豚の「福祉」に向き合う(1)

 阿蘇山のふもとに位置する熊本空港のほど近く、東海大学阿蘇くまもと臨空キャンパス(熊本県益城町)には、最先端の実習農場が広がる。その一角にある豚舎で、同大大学院博士後期課程の徳永有輝(ゆうき)さん(25)は豚の行動・管理に関わる研究を重ねていた。

 学部在籍中に豚に興味を持ったという。「豚は社会性が高く、群れであろうとするが、闘争もする。もっと知りたくて、この道に進みました」。いまは分娩(ぶんべん)・授乳期における飼育管理のあり方について、研究に取り組んでいる。

写真・図版
東海大学阿蘇くまもと臨空キャンパスの実習農場。左手前から2番目の黒い屋根の建物が豚舎=熊本県益城町、川澄・小林研二写真事務所提供

 一般的な養豚場ではその20日余りの期間、「分娩ストール」と呼ばれる飼育施設に母豚を入れる。子豚が踏みつぶされるのを防ぐためだ。

 子豚用のスペースがあるから施設全体としては、約114日の妊娠期間中に利用する「妊娠ストール」より広い。でも子豚用スペースは母豚が入り込まないよう柵で仕切られていて、母豚に与えられる空間はどちらも一緒。つまり振り向くことができないほど狭く、ほとんど身動きできない。そこで徳永さんは「よりアニマルウェルフェア(動物福祉)に対応した飼育管理のあり方を模索できれば」と考える。

母豚に4畳分のスペース

 防護服を着込み、長靴に履き…

共有