2025年秋冬コレクションのミラノ・ファッションウィーク(MFW)が25日に開幕した。先陣を切ったのはあの巨大メゾン。30周年を迎えるブランドの記念ショーも開かれた。
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グッチ
最初のショーを開いたのはファッションコングロマリット、ケリングのトップブランドであるグッチだ。ビッグブランドらしくゲストも豪華。韓国からはBTSのJIN、ドラマ「イカゲーム」に主演するイ・ジョンジェ、日本からも俳優の志尊淳が訪れた。
グッチはクリエーティブディレクターを務めていたサバト・デ・サルノがわずか2年で退任したばかりで、今回はデザインチームが手がけた男女混成のショーだった。
レディースは刺繡(ししゅう)がふんだんに施されたカーディガンやレースなど繊細な服のスタイリングと、1960年代を思わせるようなミニ丈に大きな丸ボタンがあしらわれたドレスが印象的だった。メンズはテーラードをベースに、品のある男性像を提案。現代的なボックスシルエットのジャケットは若々しさも感じさせた。
歴代のグッチのデザイナーたちは馬具からイメージした金具「ホースビット」をローファーなどに使ってきたが、今回もホースビットをチョーカーにしたり、大きめのベルトにしたり。Gが連なる「GGパターン」の生地や緑と赤の「ウェブ」と称される3本線を服やバッグにあしらい、メゾンのアーカイブからの引用を数多く使っていた。
ヌメロ・ヴェントゥーノ
一方、前シーズンまでデ・サルノが「ロッソ・アンコーラ」と呼んで好んだ、えんじ色はほぼ見当たらず、グリーンやパープル、グレーといった色調が目立った。会場全体もグリーンの内装で、変化を強く打ち出していた。ショーには、BTSのJINさんら多くのセレブの姿があった。
続いては、ベテランデザイナーのアレッサンドロ・デラクアによるヌメロ・ヴェントゥーノ。「N21」のロゴなどで日本でも長く人気が続いているブランドだが、おそらくデラクアが本当に好むのはロゴを前面に出したものではなく、ビビッドな色使いで素材感を感じさせる、モード的なシルエットな服だ。
Dスクエアード2
今回はスカートやドレスなどに巨大なリボンをあしらっていたのが印象的。ボンディング素材のスカートや、大きな丸ボタンがあしらわれたジャケットは、グッチの新作にも共通するような要素があった。ショーはレディオヘッドの「クリープ」をBGMに開かれたが、エンディングの際にデラクアがかけるのは決まってパット・ベネターの「愛の嵐」(1983年)。10年以上、何度もこのブランドのショーを見てきたが、これだけは変わらない。いつか本人に理由を聞きたい。
25日最後のショーは、双子のディーンとダンによるケイティン兄弟がデザイナーを務めるDスクエアード2。通常はメンズのシーズンにショーを開いているが、今回は30周年記念とあって、大規模なショーをレディースシーズンに開催した。
彼らがデビューしたのは1995年。きらびやかで凝ったデザインも多く、瞬く間に人気ブランドになった。当時、私は大学生だったが、周囲の友人たちは競うようにDスクエアード2の服を着ていた。
会場は高級ホテルで開催されたパーティーのように仕立てられ、ランウェーの端にはエントランスのように高級車やタクシーが次々と停まる。その中からど派手な衣装をまとったモデルたちが降りて歩いた。シースルー素材でオーストリッチフェザーがあしらわれたり、右半身がぱっくりと開いたりといったドレスの数々や、極端に股上の浅い超ローライズデニムなど、ブランドの特長を改めて見せつけた形だ。
エンディングには、パトカーが登場。警察官に扮する女性に後部座席から降ろされたデザイナーの2人が「逮捕」される演出。いったい何の容疑なのかはさておき、最後まで盛り上がった、まさに「ザ・ショウ」だった。