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雪が積もった中を走る路面電車=2025年2月5日、富山市明輪町

 自身や家族の運転による乗用車を利用しない高齢者で、徒歩圏内に駅やバス停が「ない」と答えた人は、3年後にうつ傾向になるリスクが、駅やバス停が「ある」と答えた人の1.6倍になったと、千葉大などの研究チームが全国約5千人を対象にした追跡調査で明らかにした。研究チームの松本一希・千葉大特任研究員(予防医学)は「公共交通へのアクセスを維持・改善することは高齢者のうつ対策に役立つ可能性がある」と指摘する。

 自宅近くに公共交通機関が少ない高齢者は歩行時間や社会参加が減り、うつにつながる恐れが指摘されている。

 そこで、研究チームは、全国の25市町に暮らす、当初はうつ症状がなく日常生活の動作が自立していた65歳以上の4947人(平均73歳)を2016年から追跡した。3年後には483人(9.8%)が国際指標で「うつ傾向がある」と評価された。

 自身や家族らの運転で乗用車を利用している高齢者と、利用していない高齢者に分けたうえで、自宅から徒歩圏内(10~15分以内)に駅やバス停があるかを質問した。年齢や性別、所得、就労や婚姻状況、治療中の病気の有無、同居人の有無、地域の人口密度などの影響を取り除く手法で、公共交通へのアクセスとうつとの関連を調べた。

 その結果、乗用車の利用がない高齢者(932人)では、徒歩圏内に駅やバス停が「ない」と答えた人は「ある」と答えた人に比べて、3年後に「うつ傾向」になるリスクが1.6倍となり、統計上の明確な差が出た。乗用車を利用している高齢者では関連は見られなかった。

 松本さんは「地域の交通計画…

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