トランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領が28日、ホワイトハウスで会談した。開始から40分ほど経ったところで激しい言い合いになり、トランプ氏が「米国への感謝が足りない」と声を荒らげるなど協議は決裂。予定されていたウクライナの希少資源に関する協定への署名も共同記者会見も中止された。
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トランプ氏は会談後、自身のSNSに「ゼレンスキー大統領は米国が関与する和平の準備ができていないと判断した」と投稿。「私が欲しいのは平和だ。彼は米国が大切にしている大統領執務室で、米国を軽んじた。和平の準備ができたら戻ってくればいい」と主張した。
一方、ゼレンスキー氏もSNSに短い文章を投稿。米国の支援と自身の訪米の実現に謝意を示し、「ウクライナが必要としているのは、公正で永続的な平和だ。まさにそのために、私たちは働いている」と訴えた。
ゼレンスキー氏は会談に、いつものカーキ色のスウェット姿ではなく黒色のフォーマルな装いで到着した。
記者団には会談の冒頭約50分が公開され、初めはなごやかに進んでいた。トランプ氏はウクライナに今後も武器を提供するかと記者団に問われると「もちろんイエスだ」と答え、「あまり送る必要がなくなるといい。早く(戦争を)終わらせたいからだ」などと語っていた。
ところが、40分ほど経過したところで協議は暗転。同席していたバンス米副大統領が、ロシアのプーチン大統領に厳しい態度をとったバイデン前大統領と違い、トランプ氏は積極的な外交に乗り出していると語ったのに対し、ゼレンスキー氏は2014年に南部クリミア半島をロシアに違法に併合され、トランプ1次政権を含む歴代米政権がプーチン氏を止められなかった経緯を話し出した。「いったいどんな外交をするのか」と問われたバンス氏は、そこで「米メディアの前でそう主張するのは失礼だ」と口火を切った。
バンス氏は昨秋の訪米時にゼレンスキー氏が激戦州ペンシルベニアの陸軍砲弾工場を民主党議員と訪れたことを持ち出して「相手側の選挙運動をした」とやり玉にあげた。「この会談を通して一度でも(米国の支援に)ありがとうと言ったか?」などとまくし立て、「何度も感謝を述べている」と反論するゼレンスキー氏と応酬に。さらに、ウクライナの安全保障は欧州と大西洋を隔てた米国の問題でもあり、「いずれそう感じるだろう」と主張したゼレンスキー氏を、トランプ氏が「我々がどう感じるかは、あなたが決めることではない」と強い口調で遮り、「あなたは今、本当に良い立場にいない」「あなたは第3次世界大戦をけしかけているようなものだ」「あなたの兵士は不足している。それなのに停戦は望んでいないと言うのか」などとたたみかけた。
トランプ氏は「もっと我々に感謝すべきだ。我々なしであなたに(交渉の)カードはない」とも語り、ゼレンスキー氏の「態度が変わらなければ取引は難しいだろう」と述べた。
会談はその後非公開に移ったが、決裂は明らかだった。予定された協定の署名も共同会見もないまま、ゼレンスキー氏はホワイトハウスを去った。米FOXニュースによると、最後は協議継続を懇願するウクライナ側を、同席したルビオ米国務長官が「蹴り出す」形になったという。
ゼレンスキー氏にとっては今…