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北朝鮮インサイト⑳(完)

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2023年2月8日、朝鮮人民軍創建75周年祝賀軍事パレードを観覧する金正恩朝鮮労働党総書記。朝鮮中央通信が9日に配信した=朝鮮通信

 日米韓3カ国の政府は、どこでどう北朝鮮政策を誤ったのか。なぜ「核保有国」となることを阻めなかったのか。ふり返れば、北朝鮮に対する偏見や思い込みこそが、今日の事態を招いたと言えないでしょうか。

 いまなおあちこちで「北朝鮮は近く崩壊する」「あんな独裁国家が存続できるはずがない」といった言説が飛び交います。しかし、少なくともその体制が存続してきたことは確固たる事実です。

 北朝鮮はなぜ崩壊せずやって来られたのか。これからもし不安定化するとしたら、どんなことが考えられるのか。長く公安調査庁で北朝鮮を分析してきた坂井隆さんに聞きます。

北朝鮮ウォッチャー 坂井隆さん

さかい・たかし 1951年生まれ。78年に公安調査庁に入庁し、ひたすら北朝鮮をウォッチし続けてきた。2012年に退官後も独自に分析を進め、その手腕は専門家らの間でも高い評価を得ている。共著に「独裁国家・北朝鮮の実像」(17年、朝日新聞出版)など

 〈箱田〉全20回にわたってお届けしてきた「北朝鮮インサイト」も今回が最終回です。連載を結ぶにあたり、多くの人が抱く疑問のひとつ。つまり、独特な北朝鮮の体制は、これからどうなりそうなのかをお聞きします。

 〈坂井〉今後かなり長期間にわたって安定を維持する公算が大きいと判断しています。その要因は主に三つです。

 ひとつは朝鮮労働党を通じた徹底した統制力です。党は、国家機関はじめ軍、企業所・農場、各級学校、社会団体など国家・社会のあらゆる分野で、中央から基層までを網羅する組織をつくっています。言ってみれば、あらゆる活動を全面的、絶対的に指導、統制しているのです。

 〈箱田〉朝鮮労働党員が末端にまで目を光らせているわけですね。

【連載】北朝鮮インサイト(全20回)

核・ミサイル開発に邁進し、日本にとってやっかいな隣国・北朝鮮。この国は実際どうなっているのか。40年以上にわたり、北朝鮮を分析してきた坂井隆さんの見方を全20回の連載でお伝えします。

 〈坂井〉党員だけでなく、傘…

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