「部落は治安が悪く怖い人がいる」「今も優遇されている」「差別される理由がある」……。部落差別を助長するような誤情報がインターネット上にあふれている。誤った情報に惑わされないよう正しく部落問題を知ってほしいと、大阪府豊中市が若い世代に向けたショート動画を制作し、公開した。
タイトルは「同和問題マジレスすると」。部落問題への誤った認識から出る疑問に、「マジレス」(=真面目に返事)していく内容だ。
長くても30秒のわけ
例えば、ある動画では「部落差別なんてふれずにそっとしておく方がいいんじゃないの?」という疑問が投げかけられる。
これに対して、「『知らない』ことと『差別をしない』ことは違います」「知ったうえで『差別を許さない』立場で行動できる人が増えていくことによって問題の解決につながっていきます」などと、マジレスする。
動画は質問内容ごとに全部で14本ある。長くても30秒ほどで、スマホのような縦長の画面の動画「YouTubeショート」に投稿した。
ショート動画をつくったのは、過去の反省からだ。
市は、以前にも部落問題を扱った啓発動画をつくった。だが、それは30分と長かった。市の公式HPに掲載したが、期待したほどは広まらなかったという。そこで若者に人気があるショート動画なら、「市の公式HPを見ない人や若い世代にも届けられるかもしれない」と考えた。
部落差別はいまも
啓発に力を入れる背景には、差別がいまだに存在し、見過ごされているという現状がある。
市人権政策課によると、昨年度にも市内の公共施設で、被差別身分を指す差別用語の落書きが見つかった。また、市の2019年度の「人権についての市民意識調査」で、「同和地区や出身者に関わる差別的な内容を含む発言を聞いた」人のうち、「そのとおりと思った」と、内容に迎合することになりかねない「そういう見方もあるのかと思った」を合わせると、72.4%にのぼった。一方、「反発・疑問を感じた」は13.2%にとどまった。
市人権政策課主幹の出口裕子さんは「同和問題をあまり知らない人のほうが誤った情報に影響を受けやすい」としたうえで、「知らないと差別に気づかないどころか、意図せず差別的な発言をしてしまうこともある。同和問題に触れないのではなく、正しく触れてほしい」と語る。
ショート動画は、正しく知るための「ファーストコンタクト」だ。出口さんは「何十秒という限られた時間で全て説明できない。ショート動画で関心を持ってもらい、30分の長編動画や詳細の解説を見るきっかけにしてほしい」と話している。
「同和問題マジレスすると」は市の公式HP(https://www.city.toyonaka.osaka.jp/jinken_gakushu/jinken/douwa_keihatsu_short.html)でも見られる。