Smiley face
写真・図版
ワシントンのホワイトハウスで2025年2月28日、トランプ米大統領(右)と面会したウクライナのゼレンスキー大統領=ロイター

 トランプ米大統領は3日、ロシアの侵攻にさらされるウクライナへの軍事支援の一時的停止を指示した。国防総省の報道担当者が取材に明らかにした。戦争の早期終結をめざす米側は、停戦に向けてウクライナ側が米欧による「安全の保証」などを条件にしていることに不快感を示しており、妥協させるための強硬手段に出た。

  • 「ある程度は戦争行為」 米国の対カナダ・メキシコ関税に産業界懸念
  • 中国、米国産の小麦や大豆に報復関税へ 米国の第2弾追加関税に対抗

 ブルームバーグ通信によると同省高官は、支援の停止は、ウクライナ側が和平に向けて「誠意を持って関与している」とトランプ氏が判断するまでの一時的な措置だと説明している。ホワイトハウス高官は、紛争の解決に役立っていることを確かめるために支援を見直すものだ、と述べたという。

 米紙ニューヨーク・タイムズによると、すでに輸送手配や発注が進んでいた10億ドル(約1500億円)相当以上の武器や砲弾が対象になる。停止が長引けば、米国の軍事支援に質量ともに大きく依存してきたウクライナは窮地に追い込まれる。同紙は「最も直接的な受益者はロシアのプーチン大統領だ」とし、プーチン氏がさらなる占領地の獲得を試みたり、停戦交渉自体に応じなくなったりしうると指摘している。

 トランプ氏は3日朝には、ゼレンスキー氏が前日に記者団に語った「(戦争終結は)まだまだ遠い」という発言について、「ゼレンスキーがし得た中で最悪の発言で、米国はこれ以上我慢しないだろう!」と自身のSNSに投稿。「この男は米国の後ろ盾がある限り平和が訪れることを望んでいない」と批判していた。

 両首脳は2月28日にホワイトハウスで会談した際、激しい口論になった。予定されていたウクライナの希少資源をめぐる協定への署名や共同記者会見が中止され、ぎくしゃくする関係は一層こじれていた。

 ウクライナ側は、米欧の武器提供や平和維持部隊の派遣などによって自国の安全が将来にわたって保証されなければ、ロシアの再侵攻を許すことになり、本当の平和は望めないと考えている。他方、トランプ政権はウクライナに経済連携の強化を提案するにとどまり、米国が軍事的に関与しなくてもプーチン氏は停戦の約束を守る、と主張。両者の認識には大きなずれがある。

 会談決裂の直後、トランプ氏はゼレンスキー氏に対して「和平の準備ができたら戻ってくればいい」と主張していた。3月3日にはホワイトハウスで記者団に、協定の復活に意欲を示したものの、協議再開の条件として「彼はもっと(米国に)感謝すべきだと思う」と語っていた。

共有