能登半島地震の発生から3カ月が経った。住民の避難生活が長期化するなか、仮設住宅への入居も始まった。健康状態の悪化に加え、孤立化への懸念も高まっている。現場で支援を続ける医療関係者は「ここからが正念場」と語る。(藤谷和広)
「血の塊がありますね」
3月下旬、石川県珠洲市内の避難所。エコノミークラス症候群の予防検診で、男性(69)の足をエコー(超音波)でみていた新潟大学の榛沢(はんざわ)和彦特任教授(心臓血管外科)が指摘した。血液検査の結果、緊急の対応は必要ないと分かった。「よく水分をとって運動してください」と男性に伝え、足の血流をよくする弾性ストッキングを渡した。
エコノミークラス症候群は、同じ姿勢を長く続けることで足の血管に血の塊(血栓)ができる病気だ。自覚症状がないことが多いが、血栓が肺の血管に移ると、呼吸困難になったり、激しい胸の痛みを起こしたりする。
2004年の新潟県中越地震以降、被災者への調査を続けてきた榛沢さんによると、平均して約1割の人に血栓が確認されるという。冷たい床の上で寝たり、トイレを我慢して水分補給を控えたりするほか、精神的なストレスが続くことで血栓ができやすくなると考えられている。
能登半島地震の避難所でも…