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 7日、パリ・ファッションウィーク(PFW)の2025年秋冬コレクションは開催5日目を迎え、後半戦に入った。ヨウジヤマモトやイッセイミヤケなどがショーを開催した。

【動画】2025年秋冬の新作を発表するミラノとパリのファッションウィークが開催。会場には日本や韓国などアジアのスターも数多く訪れた=後藤洋平撮影

レオナール

 この日は、凱旋門近くで午前10時に開催予定のレオナールから。フランスで1958年に生まれた、プリントの美しさが売りのブランドで、2022年に日本の三共生興が傘下に収めている。フローラルやレオパードなどのほか、スパンコールの刺繡(ししゅう)、無地と柄の生地の合わせかたも心に残った。

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レオナールの2025年秋冬コレクション=7日、パリ、後藤洋平撮影

 会場にはモデルでタレントのアンミカさんもいた。PFW期間中に日本ブランドが開催した別のショーイベントにモデルとして参加し、公式ショー会場もいくつか回るという。

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レオナールのショー会場を訪れたアンミカさん=7日、パリ、後藤洋平撮影

ショパール

 その後、中心部ヴァンドーム広場にあるショパールのブティックの上にある同ブランドが経営するホテルに。ザンビアで採掘された6225カラットのエメラルド原石を加工してつくったハイジュエリーコレクションのお披露目だ。原石は、その大きさとゾウの鼻のような形状から、現地でゾウを意味する「インソフ」と名付けられた。今回はイヤリングやネックレスなど、このインソフ・コレクションから15点の新作が発表された。

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エメラルドの原石「インソフ」から作られたチョーカー=7日、パリ、後藤洋平撮影

 大きなエメラルドの華麗な作品が展示されるなか、ゾウを模したペンダントが異彩を放っていて、かわいい。これはもちろん「インソフ」を着想源に作られたものだ。

 次の取材に向かう前にトイレを借りると、温水洗浄便座機能があって驚いた。海外では韓国を除いて遭遇したことがなく、しかも決して清潔とはいえないトイレばかりのフランスでは考えられないほどきれいだ。出てすぐスタッフに「I have never seen such a clean restroom in France!」と叫ぶように言ったら笑っていた。「このハイジュエリーコレクションの展示会で一番驚いたのが、そこ?」と思われたのかもしれない。もちろんジュエリーがすごかったのはいうまでもない。

イッセイミヤケ

 その後、ルーブル美術館の地下施設で開かれたイッセイミヤケのショーに。場内では、開始前にダンサーたちが踊っていた。ショーが始まるとダンサーたちは体全体を1本のパンツに通したまま、前屈して彫刻のように動かない、といったように、通常では考えられないような着方をして見せる。ただ、その姿勢はかなりつらそうだ。

 見る人を錯覚させるような模様のプリントが施されたトップスやドレスから始まり、後半は「イッセイらしい」プリーツのパートなどで構成。何度も登場したのはショッピングバッグのような形をしたトップスだ。後日、東京で開かれる展示会に足を運び、手に取って細部をチェックしたい。

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イッセイミヤケの2025年秋冬コレクション=7日、パリ、後藤洋平撮影

ジャンバティスタ・ヴァリ

 続いてはセーヌ川を徒歩で渡ってオルセー美術館近くのジャンバティスタ・ヴァリの会場へ。華美な会合向けの装いを予想していたが、前半は意外にもシンプルなデザイン。それでもやはり、徐々にドレッシーになっていくコレクションだった。こうしたブランドがコロナ禍をどのように切り抜けたのかも検証してみたいと感じた。

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ジャンバティスタ・ヴァリの2025年秋冬コレクション=7日、パリ、後藤洋平撮影

ニナリッチ

 ヴァリは開始がかなり遅れたので、次のニナリッチのショーに急いだ。会場は右岸のジョルジュ・サンク付近。凱旋門やシャンゼリゼにほど近い場所で、地下鉄に飛び乗ってギリギリ間に合った。夜のパリの街を模したランウェーを、イブニングドレスなどあでやかな装いに身を包んだモデルたちが歩く。大胆なゼブラ柄とカラフルなファーづかいが今季のキーポイントといえそうだ。

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ニナリッチの2025年秋冬コレクション=7日、パリ、後藤洋平撮影

クロエの展示会

 ニナリッチのショーが終わると、徒歩10分弱の場所で開かれているクロエの展示会へ。前日のショーで気になったのは、ファーとバッグ。ファーはフェイクファーのほかに、食用の副産物であるシアリング(羊毛)が使われていた。某ミラノブランドのPRの言葉を借りれば、こうした「出どころのはっきりしているファー」は消費者の理解も得やすく、許容する動物愛護団体もあるなど業界内でも使用のハードルが低いという。

 コレクションは全体を通してビンテージの要素がちりばめられ、レースが多用されたり、ドレープがはっきりしたりといったシャツやドレスが並んでいる。15年ぶりに復活したバッグ「パディントン」は展開される色のバリエーションも幅広かった。オリジナルに忠実だが、「2000年代に大ヒットした頃と比べて、持ち手が少し長くなっており、肩にかけることが出来るのが大きなリニューアルポイント」とWWDJAPANの村上要編集長。同じくWWDJAPANの欧州通信員で、朝日新聞でもファッション面のコラム「エアメール」のベルリン情報を担当する藪野淳さんは「ショーに来場したセレブのうち、ブランドが重要視する人物の多くは、いち早くパディントンを持っていた」と指摘。熟練の取材者は、そうしたところからブランドの戦略を読み取っているのだと納得した。

ヨウジヤマモト

 この日最後のショーは大御所ヨウジヤマモト。ロング丈のドレスやスカートのイメージを抱いて待ち構えていると、ファーストルックはミニ丈のバルーンスカート。軽やかでキュートだった。

 終盤はパープルを基調にしたドレスやコートの数々が登場していた。終了後、その真意をただそうとバックステージに向かった。しかし、海外の有名メディアがなだれ込むなか、ほとんどの日本メディアは断られてしまった。残念だが、これは仕方ない。PFWやミラノ・ファッションウィーク(MFW)のショーは全て招待制。チケットは金銭では売買されず、誰を招待し、どの席に座らせ、どの範囲まで見せるか、ショーの前後にデザイナーに会わせるか否かはブランド側が権限を持つ。自分が基本的な費用を全て負担し、人々を自宅に招くパーティーを開くことを想像すれば、それは当然ともいえる。

 しかし、なぜあの色だったのかは詳しく聞いてみたかった。大昔に聖徳太子が制定した「冠位十二階」の最高峰の色だから? そんなわけないか、などと考えながら、とぼとぼ歩いてホテルへの帰路につく夜だった。

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ヨウジヤマモトの2025年秋冬コレクション=7日、パリ、後藤洋平撮影

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