地下鉄サリン事件から20日で30年になるのを前に、事件を振り返って教訓を考えるシンポジウムが15日、東京都で開かれた。事件で夫・一正さん(当時50)を亡くした高橋シズヱさん(78)は、「人々の記憶は薄れる。危険が及ぶ可能性は、事件を知らない、関心のない人にある」として事件の記憶を語り継ぐ必要性を訴えた。
- 何度電話しても話し中だった夫 数ある一つになった地下鉄サリン事件
事件を起こしたオウム真理教を長く取材してきたジャーナリストの江川紹子さんは、1989年に教団が坂本弁護士一家事件を起こしていたことなどに触れ、もっと早い段階から教団への本格的な捜査が進められていれば、「松本サリンも地下鉄サリンもなかったのではないか」と指摘。事件前に教団や教祖の松本智津夫(麻原彰晃)元死刑囚を好意的に取り上げたマスメディアや知識人も、教団への警戒心を解く役割を担ってしまっていたと批判した。
一方、高橋さんはこの日、事件の被害者や著名人らが、事件について書いた手記などをウェブページ(https://tokyosarinterror.wixsite.com/my-site)で公開したことも明らかにした。
手記は、高橋さんが代表世話人を務める「地下鉄サリン事件被害者の会」が、事件から12年を機にまとめた冊子「私にとっての地下鉄サリン事件」に収められたもので、事件当時の村山富市首相や国松孝次・警察庁長官、村上春樹さんからも寄せられた。ウェブページには、事件についての参考書籍の一覧などもある。