ユネスコ(国連教育科学文化機関)の「世界の記憶」候補として日本政府が推薦していた「広島原爆の視覚的資料―1945年の写真と映像」の登録が、今年は見送られる公算が大きくなった。登録の可否を決める4月のユネスコ執行委員会に向け、19日公表された候補リストに含まれていなかった。関係者によると、一部加盟国から異議があったという。
世界の記憶は、後世に残す価値がある歴史的な資料が対象。「広島原爆の視覚的資料」は、大やけどを負った被爆者や壊滅した市街地など、原爆による様々な被害や影響を伝える写真1532点と動画2点からなる。保存や活用に携わってきた朝日新聞社や中国新聞社など6者が共同申請し、政府は2023年、国内候補として東京・増上寺の史料「増上寺が所蔵する三種の仏教聖典叢書(そうしょ)」とともに推薦していた。
登録の可否は、4月2~17日にパリであるユネスコ執行委員会で正式に決まる。ユネスコは今回、登録すべき候補として74件を公表。増上寺の史料が含まれる一方、「広島原爆の視覚的資料」は入っていなかった。
世界の記憶をめぐっては、15年に中国の「南京大虐殺の記録」が登録されたのを機に日本政府が制度改革を要求。21年から加盟国の異議があれば登録できない仕組みとなった。