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 中学生が学校外で受験した業者テストの成績などをもとに、私立高校入試の合格を「約束」してもらう。そんな慣習が、埼玉県にある。「受験生の安心感につながる」と肯定する声がある一方、テストを受けられる回数や保護者の情報収集力が進路を左右しかねない、という側面もある。なぜ、こうした慣習があるのか。

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 さいたま市の女性(42)は昨秋、公立中学3年の長男と埼玉県内の私立高校の個別相談会に参加した。長男が受けた北辰(ほくしん)テスト=キーワード=の結果を見せると、対応した教員は「大丈夫だと思いますよ」。女性が「落ちませんか?」と念押しすると、「(年明けにある入試本番で)受験さえしてくれれば、よほどのことがない限り落ちません」と言われ、「確約をもらったと思った」という。

【キーワード】北辰テスト

 中学生が対象で、3年生向けテストは年8回ある。2024年度の年間ガイドによると、23年度は埼玉県内の中3生の約91%が受け、そのうち約71%が5回以上受験した。運営会社の北辰図書(さいたま市)は取材に応じていない。

写真・図版
北辰テストの会場となる私立高校に向かう中学3年の生徒ら=2018年6月17日、埼玉県越谷市

 北辰テストは、県内の国公立中の3年生の大半が受けている業者テストだ。私立高校の多くは夏ごろ、説明会などで「北辰テストの偏差値60以上」といった基準を明かす。受験生側はそれを参考に秋以降、個別相談会にテスト結果や、ほかの検定試験の合格証、中学の通知表などを持ち込み、合格の「確約」をもらう。県内の多くの私立高校入試で、こうした仕組みが定着している。

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