名古屋市立の一部中学校で絶対評価でつける「内申点」を相対評価に近い手法で出す文書が共有されていたことについて、名古屋市の坪田知広教育長は25日、「絶対評価に改まって四半世紀が経とうとしているなかで、相対評価的な取り扱いをしている学校があったというのは非常に驚きだ。速やかに是正指導しないといけない」と述べた。市内の全中学校を対象に評価の実態について調査する方針を示した。
- 絶対評価の内申点、「相対」に近い手法で算出 名古屋の複数中学
朝日新聞が入手した校内で作られたとみられる文書には、「評定平均は2.9~3.2程度におさめる」「1と2の合計数が3割程度」「評定平均3.2以上は要見直し!バブル過ぎは禁止」などの記載があった。
市役所で取材に応じた坪田教育長は、「学びの改革を進める名古屋で、相対評価のように評定の1から5まで、それぞれ割合を当てはめて行われたというのは、これからの学びを阻害するものだ」と指摘。「いわゆる正規分布にするために、文書で詳細に目安を示していたというのは非常によろしくない」と不快感を示した。
来週にも市立の全中学校を対象に、評定の平均値や、「評定の1が何人、2が何人……」といった分布状況の提出を求めるほか、教員間で相対評価に近い手法を示した文書を共有していないかも調べる。結果を踏まえ、運用を改める必要があれば指導する。向こう1カ月をめどに調査する予定で、結果を公表する考えも示した。
名古屋市教育委員会も、朝日新聞が取材で特定した中学校側からの報告を受け、職員会議で具体的な数値を示した資料を配るなどの実態を把握している。「評定平均の分布を教員間で確認するのは良いが、あらかじめ決まった範囲に当てはめて評定をつけるのは適切ではない」(市教委義務教育課の杉山美津夫首席指導主事)としている。
愛知県内では、各教科の評定を足した内申点は高校受験の合否にも使われる。専門家からは「絶対評価をうたいながら、相対評価でつけていたのなら、入試の信頼性・妥当性の根幹が崩れる」といった懸念の声も上がる。