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レッツ・スタディー!経済編㉜ 「令和の米騒動」とモノ不足

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レッツ・スタディー!経済編第32回

 投資漫画「インベスターZ」にNMB48の安部若菜さん(23)、松岡さくらさん(21)、吉見純音さん(17)が入り込み、同漫画のキャラクターである「道塾学園」投資部員たちと一緒に経済を学ぶ連載。今回のテーマは「『令和の米騒動』とモノ不足」です。(構成・阪本輝昭)

お米が高い!少し安い銘柄に変えてみたけど 松岡さくらさん

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松岡さくらさん=本人提供

 まつおか・さくら 2003年、大阪府生まれ。21年、NMB48に加入。愛称さくら、さくぱん。

 松岡さくら「うーん。もう少しだけ水を減らしたほうがいいのかなあ……」

 安部若菜「さくらちゃん、まじまじとおにぎりを見つめてどうしたの?」

 松岡「私、コンビニで買う紅鮭(じゃけ)おにぎりが好きなんですが、最近、値上がりしてるじゃないですか。じゃあ、自分でつくるかと」

 財前孝史(「道塾学園」投資部員)「味はどうですか?」

 松岡「改善の余地ありだね。いつも買っている銘柄のお米と違うからか、炊きあがりが少し軟らかいんだよね」

 神代圭介(投資部主将)「いつもの銘柄のお米で炊いたらいいんじゃないの?」

 松岡「それが、いつも買う銘柄のお米がすごく高くなっていて。しかたなくワンランク安い銘柄にしたんだけど……」

 安部「お米、高くなっているよね。私も朝、卵かけごはんを食べるのが至福のときなんだけどさ、最近、卵も高いじゃない。卵をがまんする日もあるよ」

 松岡「そういえば、アイドルって『お米派』が多いような気がしますよね。なんでだろ」

 安部「ダンスや歌のレッスンで普段から体力を使うからかなあ。おなかがすくし、そこへいくと腹もちのいいご飯はありがたいよね」

お米の話なら私におまかせ!? 農業もするアイドル吉見純音さん

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吉見純音さん=本人提供

 よしみ・あやね 2007年、兵庫県生まれ。22年、NMB48加入。愛称よしみん。

 吉見純音「おや、お米の話ですか?」

 安部「あっ、よしみん。そうだ、よしみんはおじいさまとおばあさまが農家をされているんだったね」

 吉見「はい。そろそろ田植えのお手伝いに行くシーズンです。楽しみ、楽しみ」

 松岡「いいなあ。産地直送のおいしいお米をたくさん食べられるって……」

 安部「さくらちゃん、泣き顔になってるよ」

 吉見「祖父母のお米は水分が豊富で、特に新米はモチモチしていて絶品です。冷めても、おにぎりにしてもパサパサしないんですよ。よければ、皆さんもぜひ」

 松岡「わーい! こういう時、身近に農家さんがいると心強いんだろうなあ」

 吉見「でも祖父母に聞くと、色々なものが値上がりし、農家も大変みたいです。肥料代が高くなり、田んぼへ水をくみ上げるポンプの電気代もかさむって……」

お米だけは大丈夫…それも思い込みだった!? 安部若菜さん

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安部若菜さん=本人提供

 あべ・わかな 2001年、大阪府生まれ。18年、NMB48に加入。愛称わかぽん。小説家。近著に「私の居場所はここじゃない」(KADOKAWA)。

 安部「それでも、日本人の主食であるお米の値段だけは大丈夫……という思い込みがなぜか私にもあったなあ。そんなはずは当然ないのだけど」

 松岡「私もです。でも、歴史をみると、季候や病害、自然災害に大きく左右されてきた作物でもありましたよね。江戸時代には何度も飢饉(ききん)が発生しました。飢饉に備えて米を蓄えさせる囲米(かこいまい)の制度が始まったのも江戸時代です」

 財前「囲米。今話題の『備蓄米』(不作による供給不足や地震などの緊急時に備え、政府が100万トンを目安に備蓄する米)のご先祖さまみたいなものですかね」

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保管倉庫から搬出される備蓄米=2025年3月18日

 神代「宮宇地先生。お米はどのくらい高くなっているのですか?」

 宮宇地俊岳(追手門学院大教授)「総務省の小売物価統計(2月、東京都区部)によると、コシヒカリ5キロの価格は4363円で、前年同月比で1.8倍でした。政府は備蓄米の一部を放出しましたが、どのくらいの効果が出るか……」

 安部「なぜそんなに高く?」

 宮宇地「いくつかの説があります。①中間業者による投機的な買い占めでは②2024年産米が国の見込んだほどの収穫量になっておらず、需要に対して単純に量が足りていないのでは③消費者や飲食店、流通業者らが在庫を多く仕入れているのでは――などの可能性が指摘されていますね」

米消費量はピークの半分以下 インバウンドで需要急増も

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三田紀房さんの描いた(左から)松岡さくらさん、安部若菜さん、吉見純音さん ©Norifusa Mita/Cork

 財前「来年以降もこの状況が続くと困りますね。増産は可能なのでしょうか?」

 宮宇地「そもそも日本では、米の消費量は長期的に減少傾向にあり、1人あたりの年間消費量はピーク時の118.3キロ(1962年度)に対し、2022年度は50.9キロです」

 神代「そうした状況を背景に、米余りを防ぐためとして、政府は1970年代から約半世紀の間、(米の生産量を減らす)減反の政策をとってきたわけですね」

 宮宇地「とはいうものの、以前なら予想できなかったような規模の米需要が近年は新たに生まれています。例えばインバウンド(訪日外国人)の拡大。農林水産省はインバウンド関連で年間5.1万トンの米需要(23年7月~24年6月)があったと試算しています」

 松岡「5万トンか。さらに増えそうですね」

 安部「お米って、やはり日本の礎だと思うんです。100年先を見据えて、何かあったときに足りない状況に陥らないよう、お米作りをよりしっかりと支えられる仕組みができるといいですね。余る分は輸出を増やすなどして……」

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倉庫に保管されている備蓄米=2025年3月18日

 神代「農家の戸数も減り続けていますしね」

 吉見「農家をしている祖父母をみて、特に大変だなあと思うのは、米作りが気候に大きく左右される点ですね。祖父母は冬以外、いつも田んぼに気をもんでいます。夏の暑い時期の草刈りも大変そうです」

 財前「気安く『増産』なんていえませんね」

減る農家戸数…若い人たちが農業に興味をもてるきっかけを

 吉見「それから土壌作り、水管理、獣害対策(主に鹿)……。祖父母の住む地域も、ご高齢の農家さんが多いそうです。私たち世代も含め、若い人が農業を体験できて、農家の仕事に興味をもてるようなきっかけが増えるといいんじゃないかなって思います」

 安部「しかし、お米に限らず、色んなモノが不足して、値上がりしているよね。個人的には本の値上がりが痛いのよ……」

 吉見「わかぽんさんは小説家ですもんね」

 安部「そう。本代は惜しまない主義なんだ。それは本を書くためにというよりも、私の人生に必須の栄養だから。つまり……」

 松岡「本は『心のお米』ってことですね!」

 安部「さくらちゃん、何で先に言うの!?」

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お米だけじゃない…世界的なコモディティー不足とその背景

 経済に詳しい追手門学院大学の宮宇地俊岳教授(副学長)が、各回のキーワードとなる用語についてわかりやすく解説します。

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追手門学院大・宮宇地俊岳教授

 日本での米不足が話題ですが、それ以外の「モノ不足」も慢性化しています。原油や金属、穀物など世界で大量に取引される商品(コモディティー)が世界的に足りていないためです。その要因をいくつか紹介します。

 農作物は生産地での不作が響き、世界で必要とする分量を生産できていません。例えばブラジルでは、自然災害・病害などでオレンジの不作が数年続き、オレンジ果汁を輸入に頼る日本ではオレンジジュースの販売に影響が出ています。イタリアやスペインでのオリーブ不作はオリーブオイル価格を、アフリカでの干ばつ・洪水などによるカカオ生産量の低下はカカオの価格を高騰させています。

 需要が大きく伸び、既存の供…

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