(28日、第97回選抜高校野球大会準決勝 智弁和歌山5―0浦和実)
「とにかく先制点がほしい」と、智弁和歌山の福元聖矢は相手投手のリリースポイントだけに意識を向けた。
一回、1死二、三塁。マウンドの浦和実・石戸颯汰はこの大会、18回を無失点。球は速くないが、右足のつま先を頭よりも高く上げて投げ下ろす、独特な左腕だ。
左の軟投派には苦い記憶がある。昨夏の全国選手権で対戦した霞ケ浦(茨城)のエースが似たようなタイプだった。1番打者で先発したが、5打数無安打3三振。チームも延長戦の末、初戦敗退した。
そこで得た教訓は「打ち方を崩さないこと」。リリースポイントだけを意識したのは、投球フォームに惑わされないためだ。2球目、高めの直球をライナーで右前へ。先制適時打になった。
中谷仁監督から「お前が打てば勝てる」と期待され、4番に座る。その重圧は「言葉では表せない」。冬の間に体重を8キロ増やし、90キロ。強打の智弁和歌山の主軸にふさわしい体を作り上げた。
理想の4番は「ここで一本ほしいという時に打つ存在」。4打数4安打1打点。昨夏の学びを結果につなげ、チームを7年ぶりの決勝に導いた。