トランプ米大統領による「相互関税」が、原油や金などの商品市場にも波紋を広げている。世界経済の先行きが見通しにくくなり、とくに原油価格はコロナ禍の真っ最中の水準まで落ち込んだ。ロシアによるウクライナ侵攻から続くガソリン高は、いよいよ転機を迎えるのか――。
原油価格の指標となる「米国産WTI原油」の先物価格は7日に一時、1バレル=60ドルを割った。先週末の終値より約5%低く、60ドルを下回ったのは2021年4月以来、4年ぶりだ。
原油価格は年初から70ドル前後で推移していたが、トランプ氏が2日に相互関税の詳細を発表すると、下げ足を速めた。相互関税で世界経済が減速し、生産活動をはじめ、人やモノの移動が鈍って需要が減るとの見方が広がった。中国が報復措置として米国からの全輸入品に34%の追加関税を課すと発表したことも、追い打ちとなった。
また、石油輸出国機構(OPEC)の加盟国とロシアなどでつくる「OPECプラス」が3日に発表した増産方針も、急落の要因となった。世界での販売シェアを維持して影響力を保つ狙いがあるとの見方があるが、市場では原油が供給過剰になると受け止められた。
原油価格はコロナ後の経済回復による需要増と、ウクライナ危機を受け、22年に高騰した。22年3月には一時、130ドルを超え、13年8カ月ぶりの高値をつけた。その後、価格は下落し、60~90ドル台を推移していた。
今後も原油価格の下落は続く…