連載「もうひとつのやまゆり園」⑥
入所者の居室を長時間施錠していたことなどが発覚し、支援のあり方を見直してきた神奈川県立障害者施設「中井やまゆり園」(中井町)で、新たな課題が浮上した。入所者の健康管理や医療機関への受診が適切にされていないというのだ。
昨年11月から園の医務統括補佐を務める看護師の上野正文さんが赴任して気づいたのは、入所者の検査データで異常値が見過ごされる事例が多いことだった。
検査で異常値がなかったのは、入所者の2割ほど。なぜ、異常値が見逃されてきたのか。
上野さんは「(園の看護師が)そのとき取ったデータしか見ていない。あくまで『業務』なんです」と話す。データの記録はしているものの、経年の変化や比較まではしていなかった。
入所者の標準的な血圧も把握しておらず、熱を出したときも、夜間に定期的に熱を測ることはなかった。「我が子が熱を出したら、2時間後にもう一度測ろうと考えますよね」
関連ページ やまゆり園事件
神奈川県は、七つある県立障害者施設のうちの四つに県の花の名を冠し、「やまゆり園」と名づけている。その一つ、津久井やまゆり園(相模原市)で2016年、入所者19人が殺害される事件が起きた。同園を調べる中で、中井やまゆり園でも虐待を含む不適切な支援が行われていたことが発覚。県立の施設で、なぜ障害者を「人間として見ない」支援が横行していたのか。「もうひとつのやまゆり園」を取材した。(連載「もうひとつのやまゆり園」(全7回)はこのページに掲載します)
解熱剤を機械的に投与
一方で、園では入所者の体温…