ナミビアは、世界経済フォーラム(WEF)によるグローバル・ジェンダー・ギャップ指数(The Global Gender Gap Index:GGGI)で毎回、上位に顔を出す「ジェンダー大国」です。2022年5月から今年1月まで駐ナミビア大使を務めた西牧久雄前大使は「ナミビアには家庭内暴力や婚外子など、GGGIがカバーできていない深刻な問題がある」と指摘します。
――ナミビアでは、女性が閣僚の46.2%、国会議員の79.2%を占めています。
確かにナミビアでは、ムブンバ前大統領時代には女性が閣僚の約4割、現在のナンデイ・ンダイトワ第5代大統領の元では閣僚の約6割、下院議員の約半数をそれぞれ占めています。
背景には、ナミビアでは、かつて南西アフリカ人民機構(SWAPO)が中心になってアパルトヘイトの南アフリカからの独立を目指した戦争(1966~90年)の際、男女が力を合わせて戦った歴史が影響していると思います。
SWAPOはアパルトヘイトに反対したマンデラ元南アフリカ大統領とも親しい関係にあり、人種や性別で差別しない政策を推進しました。与党SWAPOでは比例代表制の選挙の候補者名簿を男女交互にする「ゼブラ方式」も準用されています。
――ナミビアは昨年のGGGIでアフリカ最高の8位になりました。
現地の人々は「現実的ではない数値だ」と語っていました。GGGIは男女間の格差を測定する指標ですが、GGGIだけでは見えない課題がたくさんあるためです。
例えば、男女がともに貧困であっても学校に同じように登録していればスコアは上がります。しかし、現実には小学校の教室は不足し、安全な飲料水、電力へのアクセス可能な人は全人口の約半数です。
さらに家庭内での暴力の問題などもGGGIでは反映されていません。実際ナミビアでは女性に対するドメスティックバイオレンス(DV)の事件が多発しています。私はナミビア在任中、GGGIのランキングを評価しているナミビアの方に出会ったことはありません。
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