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豊島区の「こどものまち」発起人のさかたともえさん
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 大人がいない、子どものための「こどものまち」が東京都豊島区内に春休み中、7日間限定で登場した。ドイツの「ミニ・ミュンヘン」を参考に、子ども向けの工作教室を主宰するさかたともえさん(51)が10年前にスタートさせた。さかたさんに話を聞くと、大人がいないというだけではない、まちの魅力が見えてきた。

「こどものまち」で遊ぼう

 大人がいない、子どものための「こどものまち」は全国に広がっています。春休み中、東京都豊島区内に作られた「まち」に密着し、のびのび過ごす小学生たちの姿を見つめました。全5回の連載の最終回です。

 「ミニ・ミュンヘン」は1979年、国際児童年を記念してドイツで始まった。子どもたちが様々な仕事をし、お金を稼ぎ、税金を納めて選挙で投票するなど、現実社会をまねるような遊びを通じて、小さなまちが作られる。

 夏の約3週間開催され、7~15歳しか原則入ることができない。日本でも各地で様々な団体がこれを参考にこどものまちを主催している。

始まりは「子どもは邪魔」の声

 さかたさんがミニ・ミュンヘンに出会ったのは2014年。知人の紹介だった。当時、子ども向けの工作教室を始めたばかりで、地域センターや公民館などで工作をすると、利用者の大人から、露骨に嫌な顔をされることが続いていた。

 「『子どもは邪魔だから他に行って』と子どもの目の前で言われ、泣いてしまう子もいた。学校以外で子どもがメインの場所は児童館くらい。大人がいない遊び場は他にもっとないの?という思いだった」

 小学生だった自身の長女と次女と実際にミュンヘンに見に行くと、議会にタクシー会社、まちの施設の設計をコンペで決めるなど、大人顔負けのスケールの大きさに圧倒された。何より、「市民」になった長女と次女が、生き生きして、いつまでも遊んでいられる場所だった。

 帰国後すぐにプレイベントを行い、15年から今の形でこどものまちを始めた。「特定の子だけが有利になるようなヒエラルキーを作りたくない」と、全体の運営計画や事前準備は大人で行い、まちに来た子どもはみんな同じスタートラインで「市民」になる仕掛けにした。

 まちの仕組みが分かっていない初参加の子は混乱しがちだが、困っていたら何度も来ている子がそれとなく教える。大人に頼るのではなく、子ども同士で教えあい、学びあう。そんな関係性を目指した。

 だが、近年は大人に許可を求…

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