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中島京子 お茶うけに

中島京子 お茶うけに

 「小さいおうち」で直木賞、「やさしい猫」で吉川英治文学賞などを受賞した小説家の中島京子さんが、日々の暮らしのなかで感じるさまざまなことをつづる連載エッセーです。

 みなさん、本を読むときは、どこでどのようにして読みますか?

 わたしの場合、仕事で必要な資料等の場合は、椅子に座って机の前で読むけれども、けっこうな割合で、寝転がっても読む。書斎には長座椅子のようなものがあり、背もたれ部分は腰から頭にかけてゆるやかな傾斜がついていて上半身を起こして支えてくれるので、読書にはちょうどいい。もっとおしゃれな読書用の椅子をいつか買おうと思いながら果たせずにいるのは、この長座椅子の使い心地が悪くないからだ。

 昼間ですらこうなのだから、夜はとうぜん、ベッドの中が読書スペースとなる。

 かつてはうつ伏せ姿勢で、肘(ひじ)から手首の部分で上半身を斜めに起こして読んでいたこともあったのだが、これは二の腕や肩や首に負担がかかるので長時間は続けられない。

 仰向けの場合も腕が痛くなるけれども、横向きになって肘をついたりしながら、なんどか姿勢を変えれば、まあ、いける。そのまま寝落ちできる就寝前の読書は最高!

 と、思っていたのだが、世に「鈍器本」とも呼ばれる、厚さ7~8センチの辞書みたいな小説や評論があらわれて、わたしの読書環境にケチがついた。

 腕で本を支えるには重すぎる…

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