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欧州連合(EU)の欧州委員会本部の前に掲げられた欧州旗=2024年5月31日、ブリュッセル、牛尾梓撮影

 欧州連合(EU)が昨年成立させた人工知能(AI)を包括的に規制する「AI法」で、生成AIなどを開発する企業が守るべき義務に関する「ルールブック」を撤回するよう求める書簡を、米国政府がEUに送っていたことがわかった。EUの行政を担う欧州委員会が28日、明らかにした。

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 ルールブックと言われるAI法の「実践規範」は、「ChatGPT(チャットGPT)」といった生成AIなどを開発する企業に対し、学習に使ったデータの透明性の確保やリスク軽減策の義務をどのように満たすべきか基準を示す。規範に従うことでAI法の義務を満たしていることが証明できる。現在、詳細を加盟国などが策定中で、5月にも完成する予定だ。

 ブリュッセルにある米政府EU代表部は欧州委に書簡を送って「圧力」をかけている。欧州委の報道官は「(策定では)AI企業や関係者との対話を積極的に行っている」と説明し、多くのAI開発企業を抱える米側に理解を求めた。

 AI法を含めEUのデジタル規制に対し、米国のトランプ政権は反発している。トランプ大統領は2月、EUが米国のIT企業に制裁金を科せば、追加関税で報復すると警告。バンス副大統領も同月、「トランプ政権はAIシステムがイデオロギー的偏見から自由であると保証する。国民の言論の自由を決して制限しない」とEUの規制を批判していた。

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