東京都が運営していた「墨田産院」(墨田区、閉院)で67年前、別の新生児と取り違えられた江蔵智さん(67)が28日、戸籍を管理する墨田区役所を訪れた。出自の調査を都に命じた東京地裁の判決をふまえ、調査への協力を求める陳述書を提出した。
裁判をめぐっては小池百合子知事が25日、控訴を見送り、生みの親についての調査を始める意向を示していた。江蔵さんは28日、戸籍を扱う墨田区の窓口課を訪問。対応した職員に判決内容を説明し、都の要請に応じて、出生届の情報が記された戸籍受付帳の情報を提供するよう求めた。
江蔵さんによると、取り違えを知った2004年以降、約15年にわたって毎年、出生日の前後10日間の戸籍受付帳の開示を請求してきたが、ほぼ黒塗りの文書で、何もわからなかったという。
江蔵さんは「戸籍受付帳がなければ親を捜すのは大変難しく、区役所が首を縦に振らないとまた足踏み状態になってしまう。プラスの回答が出ることを願う」と話した。
同行した代理人の小川隆太郎弁護士は「これまで調査が実現しなかったのは、区が都に対して戸籍受付帳を開示しないという理由もあった。その意味では区も問題を長期化させた責任の一端がある」と指摘。「区自身も当事者であるという意識を持ち、すみやかに応じていただきたい」と話した。