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東京佼成ウインドオーケストラのコンサートマスター、林田祐和さん(右端)の指導を受ける荻野航さん(右から2番目)たち=2025年4月27日午後0時57分、東京都杉並区方南2丁目、石川瀬里撮影
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 5月18日に東京都府中市で開かれる「吹奏楽の絆コンサート」(同コンサート実行委員会主催)に参加する中学生約70人が27日、共演するプロの吹奏楽団員からレッスンを受けた。指導を受け、中学生の奏でる音は豊かな表情をみせるようになった。熱心にメモを取り、本番に向けて気持ちを高めていた。

 参加したのは、都内から広く募った都中学校吹奏楽連盟合同バンドと、コンサート会場の地元から募った府中市合同バンドのメンバー。いずれも、多数の応募者から演奏曲の編成などを考慮して選ばれた。

 メンバーは11~13のクラスに分かれ、東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)の楽団員らからレッスンを受けた。正しい奏法や、音楽の流れをつかみ、表現する方法を教わった。

 「もう、とにかくすごくうれしくて。人生で二度とない良い経験でした」

 府中市合同バンドに参加した府中七中のアルトサックス、荻野航さん(3年)は、TKWOのコンサートマスターでアルトサックスの林田祐和さん(43)のレッスン後、はじけるような笑顔を見せた。

 取り組んだのは吹奏楽コンクールの自由曲でも人気の「マードックからの最後の手紙」(樽屋雅徳作曲)。タイタニック号の沈没事故を題材にした、場面の変化に富む曲だ。「曲の景色が見えるよう、場面ごとに音色を考えて」「もっと息をそろえて、色々なアンテナを張って合わせて」。アドバイスされるたび、荻野さんたちは楽譜に細かく書き込んだ。

 荻野さんは「林田さんの音は、この楽器が出せる一番美しくて明るい音色。同じパートを吹いてもらってとても勉強になった。アクセントのつけかたや、フレーズの歌い方など、コンサートに向けて、今日学んだことをしっかり練習していきたい」と語った。

 同じ府中七中から見学に来ていた本多華歩さん(3年)は、ノートにびっしりとメモを取っていた。プロの楽器のくわえ方、指の動かし方は「自分と全然違う。すごく勉強になりました」。部員にも、音の合わせ方やチューニングの仕方など、学んだことを伝えていきたいという。

 28校の37人が参加する中吹連バンドは、「インヴィクタ序曲」(スウェアリンジェン作曲)のレッスンを受けた。

 「ひとつひとつの音のニュアンスを、どう表現するかが大切」。ピッコロとフルートの3人が、TKWOのピッコロ・フルート奏者、丸田悠太さん(43)にめりはりのつく吹き方を教わると、音楽に躍動感が生まれた。

 練馬区立開進三中の大園紅華(くれは)部長(3年、ピッコロ)は「アクセントの種類がたくさんあることなど、今まで知らなかった表現の仕方をたくさん教えてもらった」と目を見張った。

 開進三では1週間前、中吹連バンドの顔合わせを兼ねた合奏が行われ、希望した部員が案内係を務めた。

 合奏の様子を食い入るように見つめていた部員たちは「聴けてよかった」と目を輝かせた。数人は顧問に頼み込んで、自主練習をしてから帰ったという。

 新入生13人を迎え、34人で新年度の活動を始めたばかり。「部活に生かしたいことがいっぱい。部員を教える時に役立てたい」と目を輝かせた。

 二つのバンドはコンサート当日、指揮者の小林恵子さんの公開レッスンを受けたあと、TKWO団員らと、それぞれの曲を合同で演奏する。

 このほか、TKWOが今年度の全日本吹奏楽コンクールの課題曲全曲と、主に小編成部門で人気の「いつも風 巡り合う空」(福島弘和作曲)、吹奏楽の名曲「春の猟犬」(リード作曲)などで、プロならではの豊潤なサウンドを披露する。

 林田さんは「最初は緊張感もあったけど、だんだん慣れて、伸び伸び吹いていました。プロと一緒に音楽をする機会は貴重だと思うので、音楽的な感動をたくさん得てもらえていたらうれしいです」と話していた。

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