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 原子力規制委員会は30日、北海道電力泊原発3号機(出力91.2万キロワット)について、再稼働に向けた安全対策が新規制基準に適合すると認める審査書案を了承した。敷地内の断層が活断層ではないことの証明などに時間がかかり、審査は過去最長の12年近くに及んだ。北電は2027年の再稼働をめざす。

 規制委は30日間の意見募集後、今夏にも審査書を決定する。21年の中国電力島根2号機(松江市)以来、18基目となる。

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泊原発の追加調査で掘削した場所を確認する原子力規制委員会の石渡委員(左から2人目)ら=2019年11月15日、北海道泊村、佐久間泰雄撮影

 北電は津波の高さを最大15.68メートルと想定し、27年3月までに高さ19メートルの防潮堤をつくる計画。地元自治体の同意を得た上で、同年の早期に再稼働させる方針だ。

 防潮堤などの安全対策工事の費用は少なくとも約5150億円とされ、当初見積もりの17倍に膨らんだ。3号機の建設費(約2900億円)を大きく上回り、未設置のテロ対策施設なども含めるとさらに増える見通し。

 北電が泊1~3号機の審査を申請したのは新基準が施行された13年7月。最も新しく、出力が大きい3号機の審査を優先し進めてきた。

 ところが、敷地内の断層が活断層ではないことの根拠にしていた火山灰層が現地調査で確認できず、追加調査に時間がかかった。想定する地震の揺れの大きさや津波の高さなどの影響評価や、その対策をめぐる議論も難航した。

今後は「難航原発」が焦点に

 ほぼ同時期に北電を含む4社が申請し、九州電力川内原発(鹿児島県)を皮切りに18年までに次々と再稼働する中、泊原発の審査だけが残っていた。

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【地図】泊原発の位置

 北電は今後、泊1、2号機(いずれも57.9万キロワット)の審査も進め、30年代前半の再稼働をめざす。

 これまで規制委に審査を申請した27基のうち、再稼働したのは14基。東京電力柏崎刈羽6、7号機(新潟県)と日本原子力発電東海第二(茨城県)の3基は審査を通ったが、地元の同意を得られていない。原電敦賀2号機(福井県)は昨年11月に不許可となった。

 審査が続く9基のうち島根3号機以外の8基は、申請から約10年が経過。南海トラフ巨大地震の想定震源域に位置していたり、敷地内の地盤に問題を抱えたりしている。今後は、こうした「難航原発」が審査の中心となる。

■なぜ審査に12年も? 異例…

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