「統合失調症の我が子の将来をどうすれば」「親も年を取り、8050問題がすぐそこにある」――。朝日新聞デジタル版の連載「統合失調症、その先へ」には、患者の家族からのお便りが多く寄せられました。病気にどう向き合えばいいのか、家族支援に詳しい大阪大学の蔭山正子教授(公衆衛生看護学)に話を聞きました。
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精神疾患の家族を持つ人の支援や研究を続けています。統合失調症を患う人が引きこもり状態になったり、治療がうまくいかなかったりして親が苦しんでいるケースは少なくありません。
まず、病気に対して親自身が偏見を持っている場合があります。そうすると事態を悪化させてしまうので、偏見を取り除いていくのが最初のステップです。家族会などで、同じ立場の人の話を聞くことが役立ちます。
その人なりのリカバリー、スモールステップを肯定
病気との付き合いが長くなると、本人の状態が親の思い通りでなくても、その人なりのリカバリーを大切にされる方が多いです。スモールステップですが、家事ができる、留守番ができるとなったら、それを肯定していきます。
「社会復帰」にもいろいろな状態があります。お金を稼ぐことだけではなく、例えば当事者の会などで発言するといったことも社会貢献です。どんな生き方をしていても、本人にも家族にも自信を持ってほしいと願います。
家族が病気を受け入れられないと、医療や福祉サービスを遠ざけることにもつながります。統合失調症は、本人に病気の自覚がないことが多く、治療中断も起こりやすいです。引きこもったり、医療を拒否したりした時に外部に相談できるのは家族しかいません。
保健所や基幹相談支援センターが相談先
家族が孤立しないことも大切です。統合失調症の患者が家族に手をあげてしまうケースがありますが、多くは、治療につながっていなかったり、引きこもり状態になったりしている時です。また、治療をしていても人生がうまくいかなくて身近な家族にあたってしまうケースもあります。
こうした時は、医療やサービスにつながるきっかけだと思って、勇気を出して最寄りの保健所や(地域で総合的な相談業務を担う)基幹相談支援センターにSOSを出してほしいと思います。
専門家が早期介入する仕組み 日本でも
いま、日本では本人が診察を受けないと訪問看護などの対象になりません。保健所もなかなか介入できていないのが現状です。
イギリスなどでは、「クライシスインターベンション」といって、在宅で精神疾患を持つ人が危機的な状況になったとき、専門家が訪問する仕組みがあります。それも24時間態勢です。日本でも、周囲が困った時に専門家が早く介入できるような仕組みを作ることが必要だと感じています。
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