NHKは1日、Eテレのドキュメンタリー番組「ETV特集」の「フェイクとリアル 川口 クルド人 真相」を再放送した。同番組は4月5日に放送したが、「より取材を深めたい」などとして、同9日の再放送予定を急きょ1カ月近く延期し、番組内容を再編集する異例の措置を取った。番組に対しては在日クルド人の側に立った「偏向報道」だとする一部の批判があったが、NHKは番組の再編集について「あくまで自主的な判断」だとしている。
番組では、SNSの投稿を分析し、埼玉県川口市の在日クルド人に対して、「暴動を起こした」「犯罪者」といった内容の投稿が2023年4月以降に爆発的に増えたことを指摘。現地のクルド人や、投稿した当事者への取材、さらにネットメディア研究や難民政策などの複数の専門家の意見を元に構成している。
再放送で変更した部分について朝日新聞が確認した限りでは、クルド人に対する街宣活動をする団体の代表の「ヘイト行為はしていない。クルド人全員を批判しているわけではない」という主張を新たにナレーションで加えた。また「クルド人男性が『日本人死ね』と叫んでいる」などとしてSNSで拡散された動画について、実際には「病院に行け」などと叫んでいたという専門家の音声分析の結果を伝えている。
NHKは再放送を延期した理由について、朝日新聞の取材に対し、「(4月5日の)放送でお伝えした事実関係に誤りはないが、より取材を深めた上で改めてお伝えした方がいいと判断した」と説明する。具体的にどの部分の取材を深めたのかについては「取材制作の過程についてはお答えしていない」と回答した。