阪神甲子園球場で5月5日に開かれる「春の軟式交流試合」に、静岡県内から静岡商軟式野球部主将の杉浦祥太内野手(3年)が出場する。憧れの甲子園での試合を前に、「明るくチームを盛り上げ、打撃や守備の練習の成果をグラウンドに思い切りぶつけたい」と意気込んだ。
交流試合は全国高校軟式野球選手権大会が今年で70回を迎えるのを記念して日本高校野球連盟が主催する。全国から選ばれた選手50人が東西に分かれて対戦する。杉浦さんは西日本チームの副主将を務める。
小学6年から野球を始め、中学でも軟式野球に打ち込んだ。「高校では硬式をやろう。甲子園に行きたい」。そんな思いが変わったのは中3の時。静岡商の軟式野球部でプレーする2歳上の兄がきっかけだった。軟式の東海大会準決勝を観戦して衝撃を受けた。
軟らかいゴムボールを使う軟式は長打が出にくい。だが、目の前の選手たちは中学では見たことのない速い打球を放っていた。ボールが高く弾むためグラウンドのわずかなへこみでバウンドが変わるのも軟式の特徴だが、守りの高い技術で失点を防いでいた。
ぎりぎりまで悩んだ末、静岡商の望月嗣久監督(44)のもと軟式の全国を目指そうと決めた。
静岡商軟式野球部は選手22人、マネジャー8人。杉浦さんは広角に長打を打ち、鋭く速い打球が持ち味だ。「打ち勝つ野球」を掲げるチームの打線を引っ張る。守るのは遊撃や三塁。「軟式特有の変則的な打球もうまくさばけて、守備範囲も広い」と望月監督も信頼を寄せる。
軟式の全国大会は明石トーカロ球場(兵庫県)がメイン会場で、甲子園ではない。交流試合に選ばれた杉浦さんは、感謝の気持ちでいっぱいになったという。「まさか甲子園に出られると思っていなかった。いろんな人の支え、きっかけがあって選んでいただいた。大舞台が本当にうれしい」。チームメートも喜び、「悔い残すなよ」と激励してくれた。
県内の軟式高校野球加盟校は、浜松商が廃部し今年度は静岡商と浜松啓陽高のみ。杉浦さんは「甲子園で試合をすることで、静岡だけでなく全国の軟式をもっと盛り上げたい」と力を込めた。交流試合は高校野球総合情報サイト「バーチャル高校野球」で無料ライブ配信される。
「軟式高校野球も選択肢に」
東海地区の軟式野球部の加盟校は2024年度、愛知15校、岐阜10校、三重9校。静岡は1984年度でも5校のみ。他県に比べ軟式が少ない傾向にあった。
静岡商は県外のチームと積極的に練習試合や情報交換をしている。専用の軟式野球場があるため、試合会場になることが多いという。
自身も静岡商軟式野球部でプレーした望月監督によると、用具にかかる費用は硬式の半分ほどで済み、技術を磨く面白さがあるという。県内では硬式優位だが、関西や首都圏など大都市では軟式で全国を目指す生徒が増えており、「軟式で野球をするという選択肢が増えるといい」と話した。