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父が亡くなって10年後に届いた手紙=中川絵美香さん提供
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 富山県で生まれ育った中川絵美香さん(33)。

 東京での暮らしを経て、離婚を機に30歳でUターンした。

 「しばらく何もしないで、好きなことをして過ごそう」

 そんな思いで半年ほどかけて、県内の名所を巡って気づいたことがある。

 「学生時代は『富山は何もない』と思ってたけど、そんなことないじゃん」

 パートで働きながら、地元の魅力を発信する「えみこむ」としてインスタグラムを開設。

 次第に自治体や企業とのタイアップが増え、活動の幅も広がりつつある。

 地元の仕事をエンタメっぽく発信したり、女性を応援するコミュニティー「富女会(とめかい)」を立ち上げたり。

 最近では「何もないなら、自分たちで作ればいい」と思えるようになった。

10年前に亡くなった父

 建築士として働いていた父が亡くなったのは2015年。

 胃がんが判明して胃を全摘出したが、亡くなる前まで仕事をしていた。

 実家を離れていたえみこむさんがたまに帰ってきても、元気そうに振る舞っていた。

 高校時代に「学校やめたい。行く意味がない」と言って、ケンカをしたことがある。

 父は「将来の選択肢を増やすためにも卒業しなさい」と言って、引かなかった。

 翌日、テーブルの上に父からの手紙が置かれていた。

 高校に行った方がいい理由を書き連ねた後、最後は「自分で決めなさい」と書いてあった。

 仲直りしたいときは、直接話すのではなく手紙を書く。そんな父だった。

 亡くなった時も、家族全員に手紙を残していた。

 えみこむさん宛ての手紙には名前の由来などが書かれていて、最後はこう結ばれていた。

 「またケンカしようね」

母からLINE「お父さんから手紙が」

 今年1月、実家の母からLINEでメッセージが届いた。

 「お父さんから手紙が届いた」

 えっ? 亡くなった時にもう受け取ってるじゃん。

 何で10年経ってから手紙が届くの?

 実家に戻って封筒を見ると…

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