第78回春季県高校野球大会(県高野連主催、朝日新聞宇都宮総局など後援)第8日は3日、宇都宮清原球場で準決勝2試合が行われた。佐野日大が7―0で文星芸大付を下して3年ぶりの決勝進出。作新学院が7―0で宇都宮工を破って2年ぶりに決勝に駒を進めた。両校とも初戦から4試合続けてのコールド勝ちだった。決勝は4日、宇都宮清原球場である。佐野日大と作新学院は、17日から茨城県で開かれる春季関東大会に出場する。
作新学院の勢いが止まらない。昨秋の県大会で準優勝し、関東大会にも出場した宇都宮工を攻守で圧倒した。
相手投手は長身の左腕。ゆっくりと足を上げる投球フォームはタイミングが取りにくい。先発メンバーに左打者が多い作新学院は、かなり苦労するのではないかという見方もあった。
だが、機動力とつなぐ打線で攻略した。二回は四球で出た土井雄一郎(3年)が二盗。2死から根本一冴(3年)が適時打を放って先取点を奪った。三回にも2死から3連打と二つの盗塁などで3点を挙げ、試合の流れをぐっと引き寄せた。
2盗塁を決めた土井は、この冬に走塁に力を入れてきた。「できるだけ浅いカウントで走って好機を広げる」ことを心がけた。小針崇宏監督も「2死からのつながりが出ているのは良いところ」と評価した。
エースの斎藤奨真(3年)も気迫の投球で応えた。五回には四球などで無死満塁の危機に立たされたが、そこから3者連続の奪三振。冬のトレーニングを経て「体力がつき、後半も直球の球速が落ちなかった」と胸を張った。
決勝は昨秋の県大会準決勝で敗れた佐野日大と対戦。主将の葭葉慶治(3年)は「いかに足を使った野球ができるかが勝負」と雪辱を誓った。今大会、圧倒的な強さで勝ち上がってきた2校が、いよいよ頂点で激突する。
宇都宮工のエース横山健(3年)は三回の投球を悔やんだ。4安打を浴びて3失点し、試合の主導権を相手に渡した。結局、被安打10で7失点。「守備のミスから自分もガタガタと崩れた。県立の意地を見せたかったけれど、力不足だった」
身長185センチの大型左腕。入学時の59キロから増量を図り、現在は76キロ。球のキレに磨きをかけて、県立勢で唯一4強入りする原動力となっていた。「昨秋の関東大会で初戦負けした悔しさをバネにしてきた。これからは私立にどう勝つかを重点的にやっていきたい」
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校歌を斉唱し、応援席にあいさつした後も、佐野日大の選手たちは淡々としていた。昨秋の県大会覇者の貫禄とともに、すでに春の関東大会を見据えていた。主将の桜井剛志(3年)は言う。「秋からどれだけ自分たちが成長したかわかるし、夏に向けて足りないところを見つけたい」
春の甲子園出場を逃した悔しさをバネにしてきた。昨秋の関東大会準々決勝で健大高崎(群馬)に3―10で7回コールド負け。4番の阿部晴太朗(3年)は「自分たちとは体が全然違った」と力負けを認める。そこで冬場は走り込みやウエイトトレーニングに努めてきた。麦倉洋一監督は「例年と比べて取り組む姿勢が違った」と明かす。
この日の準決勝では、体が一回り大きくなった選手たちが躍動した。
打線は二、三回に計5点を奪い、試合の主導権を握った。桜井は「バットを振る量も増え、強い打球が野手の間を抜けたり、甘い球をしっかり捉えられたりできるようになった」。1試合平均10・5得点。全4試合でコールド勝ちした。
投手は、背番号10の鈴木有(2年)が被安打4、与四死球0の無失点で完投した。昨秋の関東大会ではベンチ入りできなかった控え投手。だが、冬場に体重を5キロ増やし、球速が上がるとともに制球も良くなった。全試合に先発し、22回で自責点0(失点2)。エース洲永俊輔(3年)の調整が遅れた今大会で、代役以上の活躍を見せた。鈴木は「関東大会でも打たせて取りたい」と話す。
力負けした昨秋の関東大会からどれほど成長したか。麦倉監督は春の関東大会で「もう1回勝負したい」と意気込んだ。
2年ぶりの決勝進出を目指した文星芸大付だったが、打線は初回の好機をものにできず、勢いに乗れないままコールドゲームを許してしまった。高根沢力監督は「もっと狙い球を徹底して打たないといけなかったが、全部の球に手を出してしまった」と反省していた。
先発の池沢竜希(2年)は、持ち味の球速90キロ台のスローカーブなどで佐野日大の攻めをかわしていたが、序盤で相手打線に球筋を見極められた。「もっと内角を突いて攻める気持ちも出せばよかった。夏に向けて、球速や投球術をレベルアップしたい」と成長を誓った。