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【連載】インビジブル・マイノリティー フランスのリアル 第4回

写真・図版
フランス国立科学研究センターのシメング・ワン研究員=本人提供

【連載】インビジブル・マイノリティー フランスのリアル 第4回

 移民の国フランスで、アジア系市民が差別に声を上げ始めています。「インビジブル・マイノリティー」(見えない少数派)と呼ばれてきた人たちはなぜ立ち上がったのか。フランスで見過ごされてきたアジア系差別の問題から、日本にもつながる多様性のあり方について考えます。

 人権問題を監視する役割を憲法で定められたフランスの人権擁護機関は2023年、仏国内の東アジアと東南アジア出身者を対象とする人種差別の調査報告書を発表しました。調査の中心を担った仏国立科学研究センター(CNRS)のシメング・ワン研究員にアジア系に対する差別の現状について聞きました。

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 ――フランスには多様なルーツを持つ移民が暮らす中、アジア系の市民に焦点を当てて差別についての調査をした理由は何ですか。

 アジア系の人々はフランスの学校や公共の場、職場などで、出自を理由とした差別の被害に遭っています。20年に始まった新型コロナウイルスの感染拡大では、アジア系に対する中傷などが増えました。フランス社会でほとんど関心が向けられていなかったアジア系への差別が明らかになり、フランスのアジア系が置かれた状況を研究する必要性を感じました。

 市民団体などを通じて中国や日本、韓国、ベトナムなど東アジアと東南アジアのルーツを持つ人たちに協力を呼びかけました。応じてくれた9カ国32人は20~40代で、仏国籍を持たない人もいます。1人当たり最長で4時間超に及ぶインタビューで、過去の差別体験などを聞き取りました。

 ――何が明らかになりましたか。

 今回の調査では、大学卒業以…

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