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【連載】インビジブル・マイノリティー フランスのリアル 第5回

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撮影に臨むセバスティアン・コングさん=ファリド・マクルフさん撮影

【連載】インビジブル・マイノリティー フランスのリアル 第5回

 移民の国フランスで、アジア系市民が差別に声を上げ始めています。「インビジブル・マイノリティー」(見えない少数派)と呼ばれてきた人たちはなぜ立ち上がったのか。フランスで見過ごされてきたアジア系差別の問題から、日本にもつながる多様性のあり方について考えます。

 「中国の出自を理由に殺害されたシャオリン・ザンを忘れない」。パリ北郊の町オーベルビリエ。地下鉄の駅から10分ほど歩いた低所得者住宅が並ぶ通りに掲げられた1枚の銘板にはこんなメッセージが刻まれている。

 縫製業を営んでいたザンさんは2016年8月、カバンを奪おうとした10代の少年3人に路上で殴り倒された。病院に運ばれたが、地面で頭を強く打ったことが原因で暴行の5日後に亡くなった。

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2016年8月に殺害された中国系フランス人のシャオリン・ザンさんを追悼するために路上に設置された銘板=2024年10月23日、パリ郊外オーベルビリエ、宋光祐撮影

 仏メディアによると、逮捕された少年たちは、中国系住民が商売のために普段から多額の現金を持ち歩いているといううわさ話を信じ込み、外見でザンさんを標的に選んだ。中国系であることを理由に一市民のザンさんが犠牲になったこの事件はフランスで、アジア人に対する差別を象徴する「ヘイトクライム」と受けとめられている。

 しかし、中国とベトナム、カンボジアのルーツを持つスンレイ・タンさん(45)は当時、ザンさんの死に沈黙する仏社会に衝撃を受けた。

 アジア系に対する差別の防止…

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