なぜ男系男子なのか。帯にそう書かれた新書「皇室典範―明治の起草の攻防から 現代の皇位継承問題まで」を今年出版した笠原英彦・慶応大名誉教授(68)=日本政治史=は、政府の有識者ヒアリングでもたびたび意見を述べてきた。皇族数の確保に向けた与野党の議論には懸念を抱く。
――与野党協議の議事録を読んで、どのように感じましたか。
「直面しているのは、二つの問題です。皇位の安定的継承、つまり天皇の位を継ぐ人がいなくなるという問題と、皇族数確保、つまり天皇を支え皇室の活動を担う皇族が減っているという問題です」
「いずれも象徴天皇制の維持にとって非常にゆゆしき事態ですが、議論の際に両者がきちんと整理されていない印象があります」
――2月に議論されたのは、現行制度では結婚時に皇室を離れる女性皇族を、結婚後も皇室に残れるようにする案についてでした。女性皇族の配偶者や子が皇族の身分を持つかどうかについては、各党の意見が分かれています。
「女性皇族の配偶者や子を皇族とすることへの反対があるのは、母親つまり女系で天皇家とつながる子が皇位継承権を持てば、女系天皇への道を開くことにつながると警戒しているためです。一つの案として、上皇后美智子さまや皇后雅子さまのように、皇族の身分を持って皇室の活動に参加するが皇位継承権はない、という形が考えられます」
現行の皇室典範で女性に皇位継承権はない。典範15条などにより、男性皇族と結婚する女性は皇族になるが、皇位継承権を得ることはない。
――3月には、皇統に属する男系男子のうち戦後の1947年に皇室を離れた旧11宮家の男子を皇族の養子とする案が議論されました。
「養子については憲法や皇室典範を踏まえる必要があります」
――現行制度は養子を強く禁じ…